HOME メディア 【小西 未来のハリウッドのいま、日本のミライ】withコロナの労使協定が締結。ハリウッドが再開へ
2020.10.26

【小西 未来のハリウッドのいま、日本のミライ】withコロナの労使協定が締結。ハリウッドが再開へ

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小西 未来(こにし みらい)

ロサンゼルス在住の映画ライター&映画監督。1971年東京生まれ。
ゴールデングローブ賞を選考するハリウッド外国人記者協会所属。ドキュメンタリー映画「カンパイ!世界が恋する日本酒」に続き、最新作「カンパイ!日本酒に恋した女たち」が現在、劇場公開中。

 


 

新型コロナウイルスの到来によって休止状態にあったハリウッドが、ようやく稼働をはじめた。

ディズニーやワーナー、ユニバーサル、ソニーといった映画会社や、テレビ局など、300社を代表する業界団体AMPTP(Alliance of Motion Picture and Television Producers)は、DGA(米監督組合)やSAG-AFTRA(米俳優組合)、IATSE(国際映画劇場労働組合)といった労働組合と、「COVID-19 RETURN TO WORK AGREEMENT(新型コロナウイルス労働復帰契約)」で合意した。コロナ禍における労使協定がまとまったため、正式にハリウッドが再開したのだ。(※1)

 

実は、ここまでの道程は短くなかった。

AMPTPが専門家やDGAの協力を得て、「Proposed Health and Safety Guidelines for Motion Picture, Television, and Streaming Productions During the COVID-19 Pandemic(新型コロナウイルスの流行時における、映画、テレビ、ストリーミング向けコンテンツを制作するうえでの健康と安全のガイドライン案)」と題した叩き台を発表したのは、なんと6月1日のこと。だが、各組合との折衝に時間がかかった。

映像制作には異なる業種の人たちが大勢に集まるため、役職ごとにコロナ対策を定めるのは容易なことではない。スタッフがコロナに感染して欠席した場合の対応や手当の金額などでも大いに揉めたようだが、9月21日にようやく合意に至った。

 

一連の交渉で浮き彫りになったのは、映像制作現場の特殊さだ。
通常のオフィス勤務であれば、リモートワークを推奨したり、社会的距離(ソーシャルディスタンス)の確保、 マスクやフェイスシールドなどのPPE(個人用防護具)の着用、手洗いや換気の徹底などの対策を取ればいい。

だが、映像制作では役者がPPEを着用できないという大問題がある。コロナ禍を舞台にしていたり、医療ドラマを撮っているのなら話は別だが、通常の物語において出演者がマスクをつけているのは極めて不自然だ。社会的距離を取ったり、飛沫を飛ばさないように小声で話したりするなどの対応にも限界がある。

 

今回、ハリウッドが合意した条件には、Zone(ゾーン)という区分けが導入されている。
役者と、役者の近くにいるスタッフが感染源となるリスクが最も高いため、彼らをZone Aと設定。“震源地”であるZone Aを中心に、大きさの異なる円が取り囲んでいるイメージだ。

たとえば、Zone Aはセットで働くすべての俳優とエキストラが対象となる。また、役者がPPEを外して仕事をするときに現場にいるカメラオペレーターやメイク、監督なども含まれる。つまり、感染リスクがもっとも高い人たちである。

Zone Aを取り囲むのが、Zone Bに属する人たちだ。撮影現場に立ち入ることが許されているものの、役者がPPEを着用しているときのみと定められている。つまり、撮影の準備や片付けを行う美術や撮影スタッフなどが対象となる。

さらにその周りをZone CとZone Dの人たちが取り囲む。撮影現場には足を踏み入れず、Zone AおよびZone Bの人たちと接触するときは6フィート以上の社会的距離を確保し、交流時間は15分を上限とする。Zone CとZone Dの違いは、所属組合によって異なるという。

Zoneの区分けによって、PCR検査の頻度が変わり、Zone Aは1週間に3回、Zone Cは2週間に1回となっている。

 

また、交流を制限するためのZone制度の導入に加えて、毎日の体温測定から消毒、換気に至るまで事細かに定められている。

個人的に驚いたのは、感染対策の観点から、クルーに提供される食事が弁当形式になることだ。メジャースタジオの現場といえば、目の前で料理人が取り分けてくれる温かい料理や豊富な野菜を取り揃えたサラダバー、バリスタが淹れてくれるおいしいコーヒーなどで知られていた。それがコロナの影響で、日本と同じ弁当形式になるとは思ってもみなかった。

 

Zoneで人の交流を厳しく制限しているため、セット見学や取材もできなくなった。それはNetflixのチーフ・クリエイティブ・オフィサーとして、オリジナルコンテンツを統括するテッド・サランドス氏でも同様だ。先日、世界最大級の国際映像コンテンツ見本市MIPCOMに登壇したサランドス氏は、「100メートル先で撮影が行われているのに、安全対策のために近づくことができないなんて、ちょっと気が狂いそうになる」と冗談を飛ばしている。

 

コロナによって制作の手続きは煩雑になり、安全対策のためのコストは膨れあがった。だが、悪いことばかりではない、とサランドス氏は言う。実際、新たな安全対策を導入したコンテンツのなかでは、撮影期間が短縮できたり、コストが下がったりしたものもあるそうだ。その理由は、以前よりも効率性を重視するようになったことに加えて、制作に関わるスタッフが感染対策を行ったおかげで、病気にかからなくなったからだという。(※2)

その一方で、「ジュラシック・ワールド/ドミニオン」「ザ・バットマン」などの現場では数名がPCR検査で陽性となったため、制作を一時中断している。手探りの再開といえそうだ。

 

(※1) https://www.hollywoodreporter.com/news/hollywood-studios-and-unions-reach-covid-return-to-work-agreement?utm_medium=social&utm_source=twitter

(※2) https://deadline.com/2020/10/ted-sarandos-covid-protocols-are-generating-savings-for-netflix-1234595726/

 

<了>

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