HOME メディア 【小西 未来のハリウッドのいま、日本のミライ】カリフォルニア州が外出制限を1段階緩和。コロナ対策の制定を急ぐハリウッド
2020.5.14

【小西 未来のハリウッドのいま、日本のミライ】カリフォルニア州が外出制限を1段階緩和。コロナ対策の制定を急ぐハリウッド

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小西 未来(こにし みらい)

ロサンゼルス在住の映画ライター&映画監督。1971年東京生まれ。
ゴールデングローブ賞を選考するハリウッド外国人記者協会所属。ドキュメンタリー映画「カンパイ!世界が恋する日本酒」に続き、最新作「カンパイ!日本酒に恋した女たち」が現在、劇場公開中。

 


 

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて経済が急激に悪化するなかで、全米各地で経済活動再開に向けての議論が活発に行われている。現在は米共和党の知事の州を中心に外出制限の緩和が進む一方で、米民主党の知事が率いる州では気の引き締めを訴えている。今年米大統領選挙を控えているトランプ大統領が対立を煽っていると言われていることもあり、未曾有のパンデミックの最中にあってもアメリカは二分されているのだ。

政治的な立場はともかくとして、いずれ規制緩和に踏み切らなくてはならないのは明らかだ。ワクチンが開発されるまでのあいだは、医療崩壊を防ぎつつ、経済活動を行う術を見出さなくてはいけない。

 

そんななか、5月5日、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム州知事が外出禁止令(Stay-at-Home Order)を一段階緩和すると発表した。カリフォルニア州は他州に先駆けて外出禁止令を発出したことで知られ、初動の早さがニューヨークのような悲劇の回避に繋がったといわれている。

封鎖緩和に関しても、データと科学に基づかなくてはならないと主張し、4月下旬に「Resilience Roadmap Stages」と題した段階的な緩和計画を発表。不要不急の外出を禁じられている現在の第1段階から、製造や事務など感染が低リスクの仕事の再開を許可する第2段階、接客などより高いリスクの業種を対象とする第3段階を経て、最終である第4段階で行政命令を完全に解除するというのだ。

このたび、ニューサム州知事は入院患者数が安定し、個人防護具や人工呼吸器の拡充、感染者急増時の受け入れ体制の確立、1日2万5000人以上のPCR検査の実施などの必要条件が満たされたため、5月8日から第2段階に入ると発表した。対象となるのは製造や小売、事務で、それぞれ州が定める新たなガイドラインに従えば営業が許可されることになる。

まだ美容院や映画館、フィットネスクラブの営業が許される第3段階までは数ヶ月かかるとみられるものの、不安と苛立ちを抱えながら外出禁止に耐えてきたカリフォルニア市民にとっては、喜ばしいニュースである。とくに、ロサンゼルスのエンタメ業界の人たちはほっと胸を撫で下ろしたはずだ。

 

コロナの感染拡大が悪化した3月から映画やテレビの制作はほぼストップしている。テレビの脚本家たちはビデオミーティングで対応していたり、VFXもリモートで作業が行われているものもある。だが、肝心の制作は止まったままだ。今回の緩和でもすぐにハリウッドが再開となることはなさそうだ。なぜなら、映像制作における感染症対策はとても複雑だからだ。

たとえば郊外の豪邸でロケ撮影を行うとする。ロケ地には大勢のスタッフがたくさんの機材をトラックに積んで押しかけることになるため、現場と近隣の住人、スタッフの感染を防止するためにはどうすればいいのか?また、照明やカメラなどの機材や小道具を複数の人が触れることになる。役者には衣装やヘア・メイクがつき、それぞれ近い距離で接するばかりか、同じ人物が複数の役者を担当することになる。さらに言えば、格闘シーンやラブシーンにおいて、役者は社会距離を維持なんてできない。かといって、マスクを着用したら観客は興醒めだ。

ざっと考えただけでも、問題は山積である。州が呈示する工事現場や引っ越し業社、美容院などのガイドラインを組み合わせるだけでなく、独自の工夫が必要となりそうだ。

 

ハリウッドの安全対策を制定するために、すでにアメリカの映画監督やテレビ演出家などが所属する全米監督協会(DGA)が動いている。コロナ渦を予言したといわれる2011年のSFスリラー「コンテイジョン」を手がけたスティーブン・ソダーバーグ監督をリーダーにした特別委員会を設置。専門家の意見を取り入れつつ、他の組合や保健当局と協力してハリウッドとしての安全基準の制定に動いているという。

しかし、ガイドラインの制定を終えても、すぐに「ミッション:インポッシブル」やMCUのような超大作が作られることはなさそうだ。シチュエーションコメディのような、コントロールしやすい場所で、少ないスタッフで実現が可能なものから始まり、そこでの知見を生かしながら、徐々に規模や生産数を拡大していくことになるはずだ。

一刻も早い復帰を求めている人にはもどかしいけれど、コロナの時代の映像制作の在り方をみんなで作っていくしかなさそうだ。

 

<了>

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