HOME メディア 面白いアニメを作り、後継者を育てる。その責任が、僕たちにはある。 有限会社シルバー 代表取締役 井田和行さん、取締役 石川泰さん
2019.12.9

面白いアニメを作り、後継者を育てる。その責任が、僕たちにはある。 有限会社シルバー 代表取締役 井田和行さん、取締役 石川泰さん

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(左から)シルバー 代表取締役 井田和行さん  取締役 石川泰さん


『ぼくたちは勉強ができない!』などの人気アニメを手がけるアニメーション制作会社シルバー。今回お話を伺うのは、19歳の頃からアニメ業界の仕事をしている代表取締役の井田さんと、ゲーム会社勤務時代に知り合い、シルバーの立ち上げメンバーにもなった石川さんです。

セル画からデータへの移行など利便性が高まった一方で、クオリティも年々進化を遂げているアニメーション。だからこそ、時間との戦いは続いています。慢性的な人材不足に悩む業界の実態、だからこその後継者を育てることの責任感について語っていただきました。


車で原画を運んでいた時代を経て

── まずは、アニメ制作にどのように関わってこられたのか、今までのご経歴をお聞かせください。

井田 私は19歳で葦プロダクション(現:プロダクション リード)に入社し、『鉄拳チンミ』『超音戦士ボーグマン』『マシンロボ』などの制作進行に携わっていました。本当は絵描きになりたかったのですが才能がなく(笑)。「何かやれる仕事はありませんか?」と聞いて、紹介されたのが制作進行の仕事だったのです。「話もできるし、人当たりもいいからやれば?」という流れでした。運転免許も持っていましたし。

 

── 制作進行の仕事に運転免許って必要なんですか?

井田 当時はデータでのやり取りではなかったので、原画を持ち歩かなければいけなかったんです。セルと呼ばれる透明なシートに絵の具で描かれた絵をスタジオから会社まで持って帰ってこなければなりませんでした。原画を描いてくださった方のところに取りに行かなければいけないので、一晩かけて運転したこともありますよ(笑)。

 

── ハードですね…!

井田 葦プロダクションには1年ほどでしたが、20歳で『機動戦士ガンダム』シリーズを制作しているサンライズに転職して6〜7年ほど在籍し、さらに『うる星やつら』『らんま1/2』などを制作しているスタジオディーンに転職しました。ここまではずっと制作進行の仕事で、その後移った童夢という会社ではデスクを担当しています。

その後、パソコンゲームのサイレンスという会社から「アニメの戦力が足りないから来てほしい」と言われ「ゲームも面白いかな」と思って移ったのですが、そこでも作っていたのはアニメゲームだったので、やることはほぼ同じでしたね。サイレンスを経て、2001年にシルバーを設立しました。

 

── どういった経緯で、会社を作ることになったのですか?

井田 私がサイレンスを辞めるときに、みんながついてきたんです(笑)。それで「会社作ってよ」と言われたので「わかりました」と。

石川 僕との出会いも、確かその頃ですね。

井田 彼はもともとアニメ屋ではなかったんです。

石川 井田がサイレンスを辞める頃に知り合って、独立の話をもらって「一緒にやらないか」と誘ってもらい、シルバーをスタートさせました。最初は事務や営業関係の仕事をしていた素人なんですが、ゲーム関係にも興味があったので作りながら覚えていきました。

その後シルバーとは別の会社を作りまして、そちらではゲームとグッズの制作を行っています。シルバーで手掛けた作品の版権イラストや、グッズ関係のイラストを作りながら、現在でもお互い足りないものを補完し合っている感じです。

 

 

アニメ人気の高まりで、10年で放送が5倍に

──シルバー設立当時はどんな展望がありましたか?

井田 アパートの一室から始めたので、それ以前にまずは生き残ることを考えていました。夢はありましたが、道順はなかったです。

 

石川 仲のいいアニメーターたちが、家賃を出し合って同じ仕事場を借りて集まっているという感じで、会社のようで会社じゃないような状態がしばらく続きました。原画を描く人だけ集まっていればアニメができるかというと勿論そんなことはないので(笑)。末端の外注として原画の下請けをしている期間はだいぶ長かったです。

 

井田 その日のごはんを食べるには困らないけど、将来的にどうするの?ということを考えた時、元請けとしてテレビアニメの仕事をある程度やり、組織自体を大きくしていかないといけないと考えました。制作進行や、作画についても当時のメンバーだけでは足りなかったので、まずは人を集めるところから始めて、ようやく「元請けをやりませんか?」というお話を頂くことができました。今から5年位前から動き出し最近ようやく形になり始めたところです。

 

石川 元々腕のあるスタッフが多かったんです。他社の作品のキャラクターデザインや、絵を取りまとめる作画監督といった上位のポジションをこなしているメンバーが多く、クライアントから「あの作品を担当した人がやってくれるならお願いしたい」と言っていただけるようになりました。

 

井田 とはいえスタッフの数は十分ではなかったのですが、どうにか踏ん張って元請けの仕事をするようになりました。一方で、スタッフを増やすと規模の大きな仕事を取り続けなくてはならなくなります。それが怖くて今まではやらなかったのですが、当時は追い詰められたんですね。「今やらなきゃダメだ!」みたいな。

 

石川 潰れていった会社の話を聞くと、“元請けをして有名な作品を作って組織は大きくなったけど、次の仕事がうまく取れなくて、そのまま肥大化したランニングコストだけがのしかかり会社がなくなった“という話も結構聞くんですよね。元請けは動く金額が大きいので、ビジネスとしては魅力的ですけど、受けられるキャパシティがないのに上の人たちだけでうまく話をまとめて、いざ始めてみたらやっぱり全然できなくて放送落としちゃう…という状況が意外と発生するんですよ。

ただ会社としてチャンスを逃さずに勝負をしなければいけないタイミングは必ずありますので気持ちは理解できますし我々も戦力を集めながらやってきました。ビジネスでは9人揃うまでは野球を始めないというわけにもいかないのが辛いところです。

 

── 業界における環境の変化などもあったのでしょうか?

井田 アニメが夜中の時間帯に移ってから、流れが変わりましたね。それまではアニメ会社も大手ばかりだったのですが、今は小さい規模の会社がたくさん出てきたので、粘りがなくて潰れちゃったり落としちゃったりするんです。「元請けの仕事あげるから独立しない?」って言われて話に乗ったのに、うまくいかないというパターンもありますね。

 

石川 テレビアニメの放送自体が昔に比べて増えているんです。昔は1週間で20本程でしたが、ここ10年で5倍以上の週100本超になっています。純粋に、その人気を支えるための作り手が足りていないですよね。

 

井田 放送を落として賠償請求がくるくらいだったら海外に丸投げして、クオリティが低くてもとりあえず放送に間に合わせようという流れもあります。あとでDVD出すときに直しましょう、みたいなパターン。でもそんなクオリティではDVDも売れないので、DVDの売り上げを見越して確保していた予算も結局なくなってしまう、という悪循環なんですけどね。

 

石川 そういう作品は、DVDも売れて数百本程度というレベルです。酷いとそれ以下もあると聞き及んでいます。DVDの製造費用自体、回収出来ていないのではないでしょうか。以前はDVD1巻につき2話ずつ入っていましたが、今は何話かまとめて入れているケースも多いようです。DVDの枚数を減らして製造費を削減しているんです。

ただ、スポンサーがソーシャルゲーム会社の時は特にそうなんですけど、最悪アニメのDVDは売れなくても影響ない。DVDはすべてゲームの宣伝に過ぎないからです。言ってしまえば、ゲームを売るための長尺CMということですね。DVDの売上も勿論ですがそれよりもゲームの登録ユーザーになってほしい。DVDを売ろうとするなら、ゲームの中でもらえるレアアイテムのパスワードを入れるなどの工夫をされているようですね。

 

井田 宣伝に使われるというのは、アニメとして正しいんですけどね。我々もかつてはおもちゃを買ってもらう目的でアニメを作っていたんですから。

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