HOME メディア 小西未来の『誰でもできる!ハリウッド式ストーリーテリング術』第11回 感動のエンディングには何が必要か?
2019.12.13

小西未来の『誰でもできる!ハリウッド式ストーリーテリング術』第11回 感動のエンディングには何が必要か?

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小西未来 (こにし みらい)

ロサンゼルス在住の映画ライター&映画監督。1971年東京生まれ。
ゴールデングローブ賞を選考するハリウッド外国人記者協会所属。ドキュメンタリー映画「カンパイ!世界が恋する日本酒」に続き、最新作「カンパイ!日本酒に恋した女たち」が現在、劇場公開中。


第3幕は、ついに物語の結末を描く箇所だ。主人公は長い旅路の末にどうなったのか?観客に感動を与えるためには、適切に話を締めくくらなくてはならない。

だが、ちょっと待てよ。いったい、どうやったら観客は満足してくれるのだろう?

おそらくハッピーエンドにするのが手っ取り早い。日常を揺るがす事態が発生し、ついに対処せざるを得なくなった主人公が、いくつもの葛藤を乗り越え、ついに目標を達成する。パチパチ。

実際、ハリウッド映画の大半がハッピーエンドになっている。だが、残念なことにすべてが感動を与えてくれるわけではない(ですよね?)。予定調和で、盛り上がりに欠けたエンディングにがっかりした経験は、誰でもあるのではないだろうか。主人公が目標を達成することが、感動に必ずしも直結するわけではなさそうだ。

 

となれば、主人公が目標を達成しないのに、感動を与えてくれる映画を観れば、ヒントが掴めるかもしれない。

 

たとえば、『ロッキー』だ。いくつもの続編やスピンオフの『クリード』シリーズが生まれているが、もともとは主演のシルベスター・スタローンが自ら脚本を執筆した低予算映画だった。
これは世界チャンピオンのアポロ・クリード(カール・ウェザース)に指名された無名ボクサー、ロッキー・バルボアが、観覧試合に挑むことになるというストーリーだ。過酷な猛特訓の甲斐あって、ロッキーは最終ラウンドまで耐え抜くものの、判定で負けてしまうのだ。

それでも『ロッキー』は観客にとてつもない高揚感を与えてくれる。それはビル・コンティの例のテーマ曲のせいだけではない。ロッキーが「対戦」と同様に、大きなものを背負っていたからだ。もともとのロッキーは賭けボクシングと借金の取り立てで生計を営む自堕落な男だった。
そんな彼は、世界チャンピオンからの突きつけられた挑戦をきっかけに、自らの限界に挑戦することになる。彼は勝利だけでなく「自尊心」を賭けて、この対戦に挑んでいたのだ。

判定では負けてしまったものの、壮絶な戦いを15ラウンド耐え抜いた彼は、プライドだけでなくエイドリアン(タリア・シャイア)のハートを得ることになる。だからこそ、この結末に観客は納得し、深く感動するのだ。なお、アカデミー賞では作品賞など三冠に輝いている。

 

 

物語を盛りあげる要素を業界用語ではステークス(Stakes)と呼ぶ。文字通りの意味は「賭け金」という意味で、主人公にとって失う可能性のあるもののことを言う。ステークスは主人公にとってとても大事なものであるから、自ずと物語に緊張感が生まれていく。

たとえば多くのアクション映画やホラー映画において、ステークスとは自身のサバイバルだ。敵を倒したり、困難な状況から脱出できたりしなければ、生き残ることができない。主人公を難しい状態に追い込めば追い込むほど、賭け金が跳ね上がり、観客は手に汗を握ることになる。
『オーシャンズ11』のような犯罪映画ならばステークスは「大金」や「宝石」、『ロッキー』のようなスポーツ映画であれば「試合」や「大会」がステークスとなる。

 

だが、『ロッキー』にはもうひとつ「プライド」という精神的なステークスが存在した。実際、良作には外面と内面の二つのステークスが共存する。内面のステークス(Internal Stakes)とは、恋愛や家族愛、友情、自尊心などで、外面のステークス(External Stakes)である葛藤と絡み合って、物語を盛り上げていくのだ。
そして、内面のステークスの行方のほうが、外面よりもずっと重要だ。主人公が試合で負けたり、仕事を失ったり、大金を失うなど外面のステークスで敗れても、自信をつけたり、好きな人と結ばれるほうが感動を呼ぶものだからだ。

 

さらに、物語には哲学的なステークス(Philosophical Stakes)を加えるべきだと主張する人もいる。『トイ・ストーリー3』や『リトル・ミス・サンシャイン』の脚本家マイケル・アーントがその人で、最高のエンディングを生み出すにはどうするべきか、『スター・ウォーズ』と『卒業』と『リトル・ミス・サンシャイン』を例にあげながら1時間半にも及ぶ動画で解説している。

http://www.pandemoniuminc.com/endings-video

これがかなりの力作で、飛び抜けたエンディングを生み出すためには、外面のステークス(External Stakes)と内面のステークス(Internal Stakes)だけでなく、哲学的なステークス(Philosophical Stakes)が必要である理由を分かりやすく説明してくれている。英語が分かる人はぜひ挑戦してみてほしい。

かいつまんで説明すると、「哲学的なステークス」とは、物語世界を貫く教訓や価値観のことだ。たとえば『ターミネーター』シリーズには運命か自由意志かというテーマがある。この二つの対立する価値観がぶつかりあい、外面のステークスと内面のステークスと絡み合いながら、クライマックスまでもつれていく。

だからこそ、観客は『ターミネーター2』のエンディングで涙を流す。機械であるはずのT-800が、自由意志で溶鉱炉のなかに入っていくからだ。

<了>

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