HOME メディア 小西未来の『誰でもできる!ハリウッド式ストーリーテリング術』第9回 物語の中心部分は、主人公による問題解決の積み重ね
2019.10.11

小西未来の『誰でもできる!ハリウッド式ストーリーテリング術』第9回 物語の中心部分は、主人公による問題解決の積み重ね

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小西未来 (こにし みらい)

ロサンゼルス在住の映画ライター&映画監督。1971年東京生まれ。
ゴールデングローブ賞を選考するハリウッド外国人記者協会所属。ドキュメンタリー映画「カンパイ!世界が恋する日本酒」に続き、最新作「カンパイ!日本酒に恋した女たち」が現在、劇場公開中。


前回、三幕構成における第1幕はSet-Upと呼ばれ、主人公の説明と「異変」を紹介する役割があると説明しました。主人公の日常を描いたあとで、彼/彼女の生活に支障をきたす異変(Inciting Incident)を発生させる。当初は消極的だった主人公も、やがて問題解決に本腰を入れる覚悟を決める。そして、主人公が非日常の世界に飛び込んだとき、いよいよ第2幕のスタートとなる。

物語における三幕構成の比率はだいたい1:2:1となっているので、120分の映画なら30分から90分くらいが第2幕。実に映画の半分を占めることになる。ハンバーガーなら牛肉のパティの部分で、ここの出来が全体の印象を左右することになるのだ。

第2幕はConfrontation(衝突)と呼ばれ、主人公が問題に対処していくさまが描かれる。

 

ベストセラー小説を映画化したリドリー・スコット監督の『オデッセイ』というSF映画を例に挙げよう。第1幕では、宇宙飛行士の主人公マーク・ワトニー(マット・デイモン)が火星基地にひとり取り残されることになった経緯と、生存の可能性が限りなく低いことが紹介される。救援のための有人宇宙船が火星までやってくるのに4年の年月がかかる。だが、基地に残された食事は1年足らずで尽きてしまう。圧倒的に不利な状況に立たされた主人公だが、植物学者としての知識を総動員して生き残ってやろうと心に決めたとき、物語は第2幕に突入することになる。

第2幕は、サバイバルのためのワトニーの葛藤が描かれていく。生のジャガイモを発見した彼は、火星の土とクルーの排泄物(!)でジャガイモの栽培を試みる。だが、畑には大量の水が必要であり、貴重な飲料水を使うわけにはいかない。試行錯誤の結果、残っていた燃料を分解し、水素を燃焼して水を生成する方法を編み出す。

次は通信手段の復活だ。地球から一刻も早く救援にやってきてもらうためには、NASAと通信する必要がある。ワトニーは過去に火星に送り込まれていた無人探査機を利用して通信する方法を思いつく。

その後も輸送ロケットが打ち上げに失敗したり、基地が爆発して農作物が全滅するなど致命的なトラブルに見舞われるものの、なんとか解決法を見いだしていくことになる。

『オデッセイ』はサバイバルドラマなので露骨になっているものの、実はほとんどの映画の第2幕はこのような問題解決のプロセスになっている。目標を達成するために、主人公は対策を考え、実行に移す。しかし、その行動によって、新たな問題が発生したり、より大きなトラブルに巻き込まれることになる。こうした状況に対応していくうち、状況がエスカレートし、緊張感が増していくという仕組みなのだ。

 

 

『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』を例に挙げよう。この物語における善良な人たちの目標は、帝国軍の宇宙要塞デス・スターの運用を差し止めることだ。惑星を消滅させる能力を持つデス・スターが完成してしまうと、劣勢に立たされながらも抵抗している反乱同盟軍は壊滅させられてしまうからだ。惑星タトゥイーンの農場で働く青年ルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)は、ひょんなきっかけでデス・スターの設計図を持つロボットR2-D2(ケニー・ベイカー)と出会うことになる。そして、謎の仙人オビ=ワン・ケノービ(アレック・ギネス)とともにR2-D2を惑星オルデランに連れていく覚悟を決めるのだ。

宇宙港で密輸人のハン・ソロ(ハリソン・フォード)とチューバッカ(ピーター・メイヒュー)を雇った二人は、宇宙一速いという宇宙船ミレニアム・ファルコン号でオルデランに向かう。

もし、ミレニアム・ファルコン号がそのままオルデランに到着していたら、ルークが活躍する機会がないまま物語は幕を閉じていただろう。
だが、脚本・監督のジョージ・ルーカスは主人公たちにさらなる苦境に追い込む展開を用意していた。

ミレニアム・ファルコン号が超高速航法を終えると、オルデランは消滅しており、おまけにトラクタービームによってデス・スターに引き寄せられてしまうのだ。R2-D2を輸送するというシンプルな計画が、どういうわけか敵の巨大要塞に捉えられてしまうのだ。

生きのびるためには、一刻も早くデス・スターから脱出しなくてはならない。そのため、ジェダイの騎士であるオビ=ワン・ケノービが、トラクタービームの電源を切りに行く。その一方で、R2-D2はデス・スターの独房にレイア姫が囚われていることを発見。かくして、ルークはハン・ソロ、チューバッカとともにレイア姫(キャリー・フィッシャー)の救出に向かうことになる――。

問題を解決するために取った行動が、新たな苦境をもたらし、それらに対応するうちに、さらに大きなトラブルに巻き込まれていることが分かるだろう。そして、問題解決を重ねるうちに、ルークはジェダイとしての成長を遂げるのである。

オビ=ワン・ケノービの犠牲のおかげでルークたちはデス・スターから脱出することになるのだが、このとき物語は問題解決のための葛藤を描く第2幕から、結末を描く第3幕に移行する。

 

次回は第3幕について解説します!

<了>

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