HOME メディア 小西未来の『誰でもできる!ハリウッド式ストーリーテリング術』第8回映画の幕はどこに? 物語の構造を見破るコツ
2019.9.13

小西未来の『誰でもできる!ハリウッド式ストーリーテリング術』第8回映画の幕はどこに? 物語の構造を見破るコツ

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小西未来 (こにし みらい)

ロサンゼルス在住の映画ライター&映画監督。1971年東京生まれ。
ゴールデングローブ賞を選考するハリウッド外国人記者協会所属。ドキュメンタリー映画「カンパイ!世界が恋する日本酒」に続き、最新作「カンパイ!日本酒に恋した女たち」が現在、劇場公開中。


 

ハリウッド映画のほとんどは、三幕構成というルールに基づいている。

物語を第1幕(Beginning)、第2幕(Middle)、第3幕(End)と三分割し、それぞれの幕において必要なイベントを起こしていく。物語を効果的に作るうえで不可欠というべきルールで、ハリウッドの映画人はもちろん、一般の映画ファンでも知っている人が少なくない。なにしろ、アメリカの映画批評において「第1幕が長すぎる」とか「第3幕がいただけない」なんて平然と書かれているほどだから。

あなたが物語を作るうえで、三幕構成に従う必要はない。ただ、効果的に物語を伝えるためにはとても有効なツールなので、どういうものか理解しておいたほうが良さそうだ。

この三幕構成を理解するうえで、もっとも難しいのは、映画における幕の切れ目を見分けることかもしれない。

舞台劇だったら、文字通り幕が下りてくるから物語の切れ目が明白だ。テレビドラマも、CMで途切れるからわかる(ちなみにアメリカの1時間ドラマは、たいてい5幕構成だ)。だが、あいにく映画は休憩なしで進んでいくから、どこで物語が区切られているのか分かりづらい。そもそも作り手の役割は観客を物語に引きこんで、没頭させつづけることなので、よく出来た物語ほど冷静に分析するのが困難になる。

でも、作り手になるためには、まずは手品のトリックを見破る必要がある。今回は第1幕と第2幕の区切りを見つける方法を教えます。

 

前回、物語の冒頭は主人公と彼/彼女を取り巻く環境の説明で始まる、と説明した。冒頭にあたる第1幕はSet-upと呼ばれ、基本設定を説明する役割がある。主人公の日常を一通り描いたあとで、彼/彼女の人生を脅かす異変が発生する。この異変のことを、ハリウッドではInciting Incident(駆り立てる出来事)やDisturbance(騒動)、Catalyst(きっかけ)などと呼ぶ。

これがきっかけで、主人公は「旅」に出ることになる。本当に旅行に出かけていくこともあるし、習い事を始めたり、刑務所に入ったり、会社をクビになる場合もある。それまでの日常で体験しなかったことに、挑戦する羽目になるのだ。

だが、主人公が新たな現実をすんなり受け入れてしまっては、ドラマが生まれない。異変が起きたあとも、主人公は気づかないふりをしたり、ごまかしたり、必死で抵抗しようとする。誰だって未知の世界に飛び込むのは怖いからだ。だが、いずれ主人公は覚悟を決めて、新たな世界に足を踏み入れることになる(そうしてくれないと、話が前に進まない)。主人公にとって「いまの世界」が第1幕であり、「新たな世界」が第2幕だ。そして、その二つの世界を繋ぐ扉こそが、幕の切れ間ということになる。

第6回目で例にあげた「ファインディング・ニモ」なら、マーリンがニモを追いかけて珊瑚礁を離れるところ、「マトリックス」ならネオ(キアヌ・リーブス)が赤い錠剤を飲んだところが幕の切れ間だ。いずれも、主人公がそれまでの世界から新たな世界へ続く扉をくぐり抜けていることが分かるだろう。

このルールは、ほとんどのハリウッド映画に当てはまる。

今回は「アバター」を超えて全世界歴代興収ランキング1位に輝いた「アベンジャーズ/エンドゲーム」を例に挙げてみたい。これは「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」の後編で、主人公が複数いる群像劇、しかも3時間越えの超大作だ。こんな異色の作品でも三幕構成が存在するのだろうか?

なお、映画の内容に触れますので、未見の方は注意してください。

 

前作「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」においてインフィニティ・ストーンの力を借りたサノス(ジョシュ・ブローリン)は、全生命の半分を消滅させるという目標を果たした。残ったアベンジャーズは、サノスからストーンを奪還し、消滅させられた人々を生き返らせる計画を立てる。しかし、サノスの居場所を突き止めるものの、すでにストーンは破壊されてしまっていた。

それから5年の年月が経過したところで、ようやく「エンドゲーム」の物語が始まる。Set-Upとなる第1幕では、全生命の半数が消滅してしまった世界において、生き残ったアベンジャーズたちの悲しい日常が描かれていく。そんななか、異変が起きる。アントマン(スコット・ラング)が、量子世界を通じたタイムトラベルを提案するのだ。タイムマシンで過去に行き、インフィニティ・ストーンを回収すればいい。

しかし、アイアンマン(トニー・スターク)は技術的に不可能だと反対。おまけに彼には幸せな家族がいた。だが、その後、解決法を発見してしまう。ホークアイ(ジェレミー・レナー)による人体実験が成功したとき、タイムマシンを利用したインフィニティ・ストーン奪還作戦が現実味を帯びることになる。世界に散らばっていたアベンジャーズたちが基地に戻り、具体的な計画を話し合うときはすでに第2幕に突入している。複数のストーリーが平行で進むので複数の切れ目が存在するのだが、第1幕が主人公たちにとって「やり場のない悲しみを抱えた日常」であるのに対し、第2幕は「一縷の望みをかけた挑戦」となっていることに気づくだろう。

 

次回は、映画の大部分を占める第2幕について説明します。

<了>

 

 

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