HOME メディア 【TV2020】漫画もテレビも、時代のニーズを捉えることで道は開ける 小学館『Sho-Comi』 編集長 畑中雅美さん
2019.9.6

【TV2020】漫画もテレビも、時代のニーズを捉えることで道は開ける 小学館『Sho-Comi』 編集長 畑中雅美さん

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漫画の映像化の舞台裏

―近年は漫画を原作とする映画やドラマが多いですが、それについてはどのようにお考えですか?

まず、多くの漫画が映画やドラマの原作に選ばれている理由の一つとしては、単純に、現在世の中に出ている物語の中で、漫画の占める割合が大きいということがあると思います。
漫画は映画やテレビ番組などのジャンルと比べて一定期間に制作する作品数が圧倒的に多いです。そのため、作家や編集者がたくさんのトライ&エラーを経験し、物語づくりのノウハウが蓄積されやすい環境にあるといえます。
例えば、ドラマのプロデューサーの場合、売れっ子の方でも1年に手がけるドラマの本数は2、3本かと思いますが、漫画の編集者は月に4、5本の話を担当するんです。
このような漫画ならではの制作上の特性もあり、漫画がヒットを狙える映像化の原作として選ばれやすいのではないかと思います。

 

―畑中さんの手がけた作品もいくつも映像化されていらっしゃいますが、どのような経緯で映像化に至ったのでしょう?

私が手がけた作品で最初に映画化されたのは、青木琴美先生の『僕は妹に恋をする』という作品ですが、この作品の映画化の経緯はかなり特殊でした。制作サイドの方からオファーをいただいたのではなく、私が「作品の映像化に興味がある」と発信したことがきっかけで自ら企画提案をすることになり、映画化に進んでいったのです。そのため、この作品に関しては私自身がキャスティングも担当するなど、例外的に深く関わることになりました。それ以降の作品は、基本的にオファーをいただいて映像化に至っています。

 

―担当の作品を映像化する上で、心掛けていることはありますか?

実は、『僕は妹に恋をする』の映画化の際に、反省したことがあるんです。というのは、映画化にあたって書かれた脚本を拝読した当初、私の感覚では多くの人々に好まれヒットするプロットに感じられなかったため、何度も修正のお願いをしてしまったんです。
ところがその時、原作者の青木先生から指摘されたのが、「監督には監督の作家性がある」ということ。アーティスティックな作風を持つ監督に、エンターテインメント作品として大ヒットを狙う視点を求めるのは違うのではないか、ということでした。
青木先生の指摘を聞いた私はハッとし、心から納得しました。そして、そのままの脚本で進めていただくことになったのですが、この経験は私にとって大きな学びとなりました。

いまでは、映像化にあたっては漫画から改変する必要も当然あると思いますので、監督を信頼し、製作をお願いした後は、たとえ自分の感覚と完全に一致しないことがあっても、自分が信じる監督の意向を入れるようにしています。

 

―良い作品を作るためには、監督や脚本家の方などとの信頼関係も大切なのですね。

有難いことにこれまで様々なご縁に恵まれ、各局の方々から映像化のお話もいただいてきましたが、まずは作家さんも含めて一緒に食事をするなどして、関係者の方々と親交を深めさせていただいています。テレビ局の方も映画会社の方も作品を愛してくださる方々ばかりなので、皆と仲良くなれますね(笑)。その時の仕事は成立しなくても別の機会にご一緒させていただくこともあり、とても嬉しく思っています。

時には、私に「今こういう作品を探しているんだけど、いい作品ないかな」といった相談をしてくださる方もいるのですが、そんな時には小学館の作品はもちろん、他社さんの作品でも、良いと思うものは積極的にご紹介するようにしています。常に誠実な姿勢でいることで、編集者としての私を信頼していただけると思うんです。
良い作品を作るためには関係者の方々との信頼関係が大切ですから、「次も一緒に仕事がしたい」と思っていただけるためにも、エンターテインメントに対しては常に誠実でいたいと思っています。

 

―あらかじめ映像化を意識して漫画をつくることはありますか?

そういうケースもあります。嶋木あこ先生の『ぴんとこな』という作品がそうです。この作品は少女漫画としては珍しく歌舞伎をテーマとした作品なのですが、企画当初は、嶋木先生も「少女漫画で歌舞伎がウケるのだろうか」と懸念されていました。

ところが、歌舞伎関連の情報を調べていると、当時は歌舞伎座を建て替える計画が固まり、2、3年後にこけら落としが行われるという情報が目に飛び込んできたんです。新しい歌舞伎座の完成、そしてそのこけら落としを機に、人々の歌舞伎への関心が高まり歌舞伎ブームが起こるはず。その時に歌舞伎をテーマにした面白い漫画があれば必ず人々の心をつかめるはずだと思い、連載に踏み切りました。
あらかじめ、勝負の時を2年後に設定して、読者受けのよい恋愛ではなく、しっかりとした歌舞伎の物語を描こうということで進めた結果、まさに思い描いたタイミングでTBSさんにドラマ化していただくことができました。

子ども達の‶テレビ離れ”の原因は意外なところにある

―近年、若者や子ども達のテレビ離れが指摘されていますが、畑中さんはどのような印象をお持ちですか?

若者や子ども達の心がテレビから離れているという実感は、全くないですね。子ども達はテレビが大好きだと思います。
これは私が子どもと話をしていて思ったことなのですが、世の中で新聞の購読率が下がっていることと、テレビの視聴率が低下していることは比例しているのではないでしょうか。かつて、各家庭に新聞が届いていた時は、子ども達は新聞のテレビ欄の番組表を見ていたと思うのですが、家庭に新聞がないと子ども達は‶今日テレビで何をやるのか”を知るすべがありません。
今は子どもでもスマホを持つ時代ではありますが、中学生くらいでも持っていない子はたくさんいますし、第一、スマホを持っている大人ですら、番組表を見ることはありません。

それに対し、You Tubeは番組表がなくても自分のタイミングで観ることができますから、その点は便利ですよね。とはいえ、個人的にはコンテンツはテレビの方が面白いと思いますし、有名なスターやアイドルがたくさん登場するのもテレビならではの魅力だと思います。
最近では子ども達に大人気のユーチューバーもいらっしゃいますが、やはりテレビに出ているスターやアイドルは別格な存在だと思うんです。
もし、近年子ども達がテレビを観る機会が減っているとしたら、新聞の番組表を家庭で見ていないことが大きな理由の一つなんじゃないかなと思います。

 

―コンテンツの内容以前の問題として、テレビを観るための情報が不足しているということですね。

そう思います。近年はCDも売れないと言われていますが、同様の事情があるように思います。以前、『カノジョは嘘を愛しすぎてる』という作品のCDを発売した時、子ども達から一番多かった問い合わせは、「CDってどこに売っているんですか?」という質問だったんです。

私が子どもの頃はCDショップが駅前にありましたが、今はあまり見当たらないですよね。ですから、今の子ども達は、下手すると一度もCD自体を見たことがないくらいなんです。それでも、大好きな漫画のCDが発売されると聞くと、「買いたい」と思ってくれるのですが、買おうにもそれがどこで買えるのかがわからない。
コンビニにも本屋にもなく、車で行かなくてはならないショッピングモールに行くしかなかったりするわけです。ネットショッピングが許されていない子ども達にとっては、CDを買うのはずいぶんハードルが高いということになります。
最近の若者はCDを買わない、と嘆いておきながら、大人は子ども達がCDを買える環境を整えてあげていないように感じます。

 

―確かにそうかもしれませんね。では、漫画と子ども達の関わりにも変化があると思いますか?

漫画に関しては、書店で“立ち読み”ができなくなったことで、子ども達が漫画に触れるきかっけが少なくなっている状況があると思います。昔は子ども達が書店で立ち読みをすることができましたが、現在はシュリンク包装というビニールのカバーが掛けられ、立ち読みできなくなっています。
このシュリンク包装は出版社ではなく書店の意向でやられているのですが、実は小学館では、このシュリンク包装を無くしていただきたいと積極的に発信しています。というのも、シュリンク包装が開始された時期と、書店さんの売り上げが減少した時期には因果関係がみられるからです。
実際、弊社では何回か実証実験をやっていて、シュリンク包装をやめて自由に立ち読みできる状態にした方が、その漫画の売り上げを伸ばすことができたという結果が出ています。(2018/07/13小学館プレスリリース「コミックス脱シュリンクパックプロジェクト」について)

昔は漫画売り場にはたくさんの子ども達がいましたが、今はその姿をみることはほとんど無くなりました。目的を持ってお金を持って行かない限り、そこに行く理由がないからです。“立ち読み”という入口が無くなったことで子ども達が漫画を手に取りにくくなっているという状況は、番組表が身近に無くなったことで子ども達がテレビを観る機会を逸している状況と似ていますね。
子ども達に漫画に親しんでもらい書店の売り上げを向上させるためにも、もう一度子ども達が漫画売り場に集まれる環境にできたらと思います。


2020をキーワードに考える“漫画”と“テレビ”のこれから

―最後に、2020というキーワードでお話を伺えればと思います。
先ほどのお話で、歌舞伎座のこけら落としに合わせて漫画の連載を企画したとのことでしたが、2020年のオリンピックイヤーに向けた企画はありますか?

もちろん、オリンピックイヤーに向けたスポーツものをやることも考えました。ですが、考えた結果、やるという判断はしませんでした。理由としては、うちの雑誌は特にスポーツに強いわけではなく、スポーツに強みがある他誌と勝負をして勝てるほどの知見はまだ無いと考えたからです。
それに、世の中がスポーツ一辺倒で盛り上がる中でも、運動が好きではなかったり、興味がなかったりする人達も一定数はいると思うんです。逆にスポーツへの熱狂を一歩引いたところで見ている人もいると思いますから、そういう人達を念頭に置いて作品を作るのも一つの方向だと思います。

 

―テレビ業界については2020年のオリンピック以降、5Gの商用サービス開始などの影響から状況が変わるのではと予想されていますが、どのように思われますか?

テレビの将来が厳しくなるとは思っていないですね。テレビは、日本中の皆が同じコンテンツを一斉に観ることができる装置ですが、これはすごいことだと思います。最近はテレビを観ながら、リアルタイムでTwitterで感想をつぶやき合う人達が多くいます。そのような人達は、テレビでほかの人々と同時に同じコンテンツを楽しみ、且つその楽しさや感動を共有したいという気持ちがあるのだと思います。

ただ、TwitterなどのSNSでは毎日テレビの内容がトレンドに上がり、テレビを使ってリアルタイムを盛り上げているにも関わらず、当のテレビはそのリアルタイムの力を使おうとしていないことは少し残念な気がしますね。
データ放送等もっとリアルタイムであるがゆえの面白さ、仕組みを作ることは出来そうなのに、現状は録画をした方が便利に感じるように出来てしまっている気がします。いかにテレビをリアルタイムで観てもらうか、という点は工夫の余地があるように思います。

 

─本日はありがとうございました。

<了>


 

畑中 雅美(はたなか まさみ)

少女漫画編集者。1998年に小学館に入社。少女漫画誌の編集者として、青木琴美の『僕は妹に恋をする』『僕の初恋をキミに捧ぐ』『カノジョは嘘を愛しすぎてる』をはじめとする数々のヒット作を世に送り出す。担当した作品には映画化されているものも多数ある。少女漫画誌『Cheese!』編集長を務めていたが、2019年7月からは新たに『Sho-Comi』の編集長として活躍。

 

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