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2019.4.12

小西未来の『誰でもできる!ハリウッド式ストーリーテリング術』 第3回 主人公作りのヒントはトム・クルーズにあり?

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小西未来 (こにし みらい)

ロサンゼルス在住の映画ライター&映画監督。1971年東京生まれ。
ゴールデングローブ賞を選考するハリウッド外国人記者協会所属。ドキュメンタリー映画「カンパイ!世界が恋する日本酒」に続き、最新作「カンパイ!日本酒に恋した女たち」は4月27日より劇場公開。


 

前回、物語とは主人公の旅路を描くもの、と定義した。
つまり、主人公が目標に向かっていく過程が、ストーリーとなるわけだ。

 

では、肝心の主人公はどうやって作ればいいのだろう?

 

理屈上、主人公は目標さえ持っていればどんな人にも務まる。動物やロボットだって構わない。可能性は無限だ。
ただし、かつてヒッチコックが、「ドラマとは、退屈な部分を排除した人生のことだ」と言ったように、面白いストーリーを作りたければ慎重になる必要がある。
たいていの映画は一人の主人公の視点で描かれていく。つまり2時間前後の上映時間のあいだ、観客は主人公とずっと一緒となる。小説ならその時間ははるかに長くなる。

 

いってみれば、物語を体験する行為は、主人公と二人きりの旅行に出るようなものだ。

 

想像してみて欲しい。
よく知らない相手と旅行に出てみたものの、途中でまったく気が合わないと悟ったときの悲劇を。世界中のどんな素敵な観光地だって、あなたの心を晴らしてはくれないだろう。
逆に、同行者がとてつもなく魅力的な人物だったらどうだろう? 一緒にいるだけで心躍るような人と一緒なら、旅行の楽しさは倍増するし、慣れきった普段の通学ルートでさえ、一生の思い出になるほどの素敵な経験になるに違いない。

つまり、物語を作るにあたり、あなたは観客や読者にとって魅力のある人物を用意しなくてはならない。もし主人公のキャラクター設定で観客のハートをがっちりと掴むことができれば、たとえストーリーに盛り上がりが欠けていても、ついてきてくれる。だが、主人公に魅力が欠けていれば、物語を途中で投げ出されてしまうリスクが高い。

 

 

では、どんな主人公であれば、観客や読者の興味を惹きつけることができるのだろう?

学校や職場の人気者のように、容姿端麗で人柄も抜群なキャラクターが真っ先に思い浮かぶかもしれない。だが、物語に関して言えば、こうした完璧なタイプは歓迎されない。むしろ、欠点があり、人間的なほうが、観客や読者の共感を得ることができる。

 

この点を熟知しているのが、トム・クルーズだ。
若い映画ファンにしてみれば、いまだに体を張っているおっさん俳優くらいの認識しかないかもしれない。トム・クルーズは「卒業白書」でブレイクし、1986年の「トップガン」の世界的大ヒットでスターになった。背丈はちょっと低いものの、ルックスとカリスマは超一流で、当時の人気は凄まじいものだった。

彼がすごいのは、多少の低迷期はあったものの、30年ものあいだハリウッドの第一線で活躍していることだ。
それは、以前とあまり変わらないルックスに加えて、作品選びが見事だからだ。いまでこそ、役者が制作会社を立ち上げたり、プロデューサーを兼ねることが珍しくなくなったが、トム・クルーズはその先駆けで、出演作の脚本から監督選びに至るまで俳優兼プロデューサーとしてコントロールしてきた。彼の出演作がいまでもヒットを続けているのは、ストーリーテラーとしての卓越したセンスを持っているからなのだ。

実際、トム・クルーズが演じるキャラクターにはいくつかの共通点がある。彼の豊富な出演作のなかから、「ア・フュー・グッドメン」、「ザ・エージェント」、「ラスト サムライ」、「マイノリティ・リポート」、「宇宙戦争」、「オール・ユー・ニード・イズ・キル」を例に挙げて解説したい(*超人的なスパイが主人公の「ミッション:インポッシブル」シリーズと、前回取り上げた「レインマン」は除いた)。

 

1) 一般人である
「宇宙戦争」でクレーンのオペレーターという設定だったように、トム・クルーズが演じる多くのキャラクターは普通の人だ。セレブリティや特権階級であることは珍しく、たいていは日々の生活のやりくりに苦労している。「ラスト サムライ」の主人公は南北戦争の英雄であるものの、見世物で日銭を稼いでいるという設定だ。

 

2)困難に遭う
「ザ・エージェント」の主人公は、正論を言ったことが理由で有名エージェンシーをいきなり解雇されてしまう。「マイノリティ・リポート」では指名手配犯に、「宇宙戦争」ではエイリアンの襲来に遭い、「オール・ユー・ニード・イズ・キル」では戦場に送られてしまう。

 

3)欠点がある
「ア・フュー・グッドメン」の弁護士は法廷経験なし、「オール・ユー・ニード・イズ・キル」の軍直属の報道官は実戦経験がなく、自らの仕事に使命感のかけらも持ちあわせていない。「宇宙戦争」での父親は、子供との接し方がまるでなっていない。さらに、「ラスト サムライ」の主人公はアルコール依存、「マイノリティ・リポート」はドラッグ中毒と、シリアスな問題を抱えている。

 

4)特技がある
「ア・フュー・グッドメン」、「ザ・エージェント」、「ラスト サムライ」、「マイノリティ・リポート」と、いずれのキャラクターも自らのキャリアで培ったスキルや、持ちあわせた長所がある。主人公が持つこうした特技が、問題解決で発揮される。

 

5)目標がある
「宇宙戦争」や「オール・ユー・ニード・イズ・キル」の主人公は、生き延びるという根源的な欲求に突き動かされている。「ラスト サムライ」の主人公は金儲けのために日本行きを決める。「ザ・エージェント」の主人公はクライアントを大切にする理想のエージェンシー作りが目標だし、「ア・フュー・グッドメン」では被疑者の弁護、「マイノリティ・リポート」では真相の解明が目標だ。

 

さて、トム・クルーズが演じるキャラクターにこれらの共通点があるのは、以下の理由からだ。

主人公が一般の人で、欠点を抱えていれば、観客や読者は自己投影をしやすい。
その人物が危機に遭ったり、生活に苦しんでいれば、たちまち共感できる。主人公が大きな壁を乗り越えながら目標に向かう姿は感動を呼ぶし、経験で培った特技を発揮する場面では、胸のすく思いがする。

 

こんな人物だったら、2人旅の相棒として申し分ないはずだ。

魅力的な主人公を作るためには、トム・クルーズに倣って、5つの要素をなるべく多く取り込むことから始めたほうが良さそうだ。

まずは、好きなハリウッド映画を見直して、その主人公がどれだけ上の要素を兼ね備えているか分析してみてはいかがだろうか?

 

<了>

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