HOME メディア 『NewsPicks』のこれから 新しいメディアのリーダーが見据える、その先とは
2019.4.8

『NewsPicks』のこれから 新しいメディアのリーダーが見据える、その先とは

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さらなる成長のために狙うべきは

服部
課金ビジネスの他に、広告も収益の柱になっていると思いますが、広告のほうで御社が感じている市況感はいかがですか?

佐々木
広告は満稿に近い状態が続いています。実は今度、値上げをするのですが、ウェブの記事広告は安いというイメージがある中で値上げの方向に動けるのは、広告チームが奮闘してくれたおかげだと痛感します。5年前には考えられませんでした。

ただ今後については、「欠かせない広告」になれているかどうかは自問自答すべきだと思っています。今は企業側も多くの広告を出している中で、ある程度リテラシーが高い層がいる場所としてNewsPicksにも広告を出してくださっていると思いますが、予算が半分になった時にも出し続けていただけるのか。費用対効果が見えにくいブランド系広告が大半なので、油断できないという緊張感はあります。

服部
課金と広告以外に、次の一手を考えられていたりもするのでしょうか?

佐々木
現在の収益の柱は、課金と広告が半々くらいで、この二つを伸ばすのが一番大事だと考えています。特に課金が安定すればするほど、広告にもプラスの影響をもたらすので、力を入れていきたいですね。
2018年10月末時点で有料会員が8万を超え、このまま順調にいけば10万に到達する日も近いと思うのですが、5年後には100万人を目指すと宣言しています。そこまでいけたら、世界のメディア、さらに経済メディアの中でもトップクラスになりますから。

今までとは違う成長をしなければいけない時期に差しかかっています。NewsPicksは「エッジが立ったブランドで一部の人に深く刺さる」という感じでしたが、そのエッジを残しながら、もっと世界中で多くの方に使っていただけるサービスにしていくという、一皮剥けることができるか否かの勝負が、これからの1~2年だと思っています。

服部
層を拡げる、リーチを拡げるということですね。

佐々木
都内であれば、“東海岸”の開拓が必要です。六本木や渋谷のような“西海岸”だけではなく、丸の内や霞ヶ関といった“東海岸”の人々にとっても、「読まないと世の中についていけない」と思っていただける必需品のメディアになっていかなければなりません。

あとはやはり“女性”です。今、女性読者は2割弱なのですが、男性ばかりいる場所というのはもう時代に合っていませんし、人口の半分いらっしゃる女性に読んでいただけるようにならないと。“東海岸”と“女性”。この二つが、NewsPicksの成長のための鍵になります。

 

“ビジネス界の芸能事務所”を目指して

服部
注目されている海外メディアの先進事例や、今後日本で起こる流れについて予測されていることはありますか?

佐々木
メディアではないのですが、『WeWork』は注目しておかなければいけないと思います。あれは言ってみればリアルSNS。リアルで会った上で、皆がアプリをダウンロードして、ユーザー同士で繋がっていけるシステムです。リアルでの接点がある上でのSNSはかなり強いので、我々のライバルだと思っています。
しかもユーザー層はスタートアップの方など、意識の高い人々が集まっています。NewsPicksの初期ユーザーもとらえていますよ。この動きに遅れたら我々は淘汰されますし、リアルを絡めたコミュニティをしっかり作っておかないと負けますね。

服部
「リアルを絡めたコミュニティ」これは、テレビや新聞社など従来のメディア全体にも、これからはそういう考え方が必要になってくるのかもしれません。

佐々木
今後はサブスクリプション(定額制)モデルを構築したメディア企業が勝ちますね。広告収入は景気にも大きく左右されて不安定ですが、サブスクリプションだと落ちることがあっても、落差が小さくて比較的安定しています。そうすると提供する側も、長期的かつ手厚い投資ができるようになります。

サブスクリプションでユーザーベースを作って、コンテンツや顧客サービスに潤沢な投資ができる。この好循環を作ることができた企業が勝つことは明白です。濃いお客様がいれば、広告主もちゃんと来てくださいますしね。
これを今、一番うまくやれているのがニューヨーク・タイムズですね。ニューヨーク・タイムズがやっていることは常にフォローして、我々にできることは真似していく。それが大事かなと思っています。

服部
他に注目しているメディア等はありますか?

佐々木
『コレスポンデント』というオランダのメディアです。サブスクリプションモデルで伸びていることに加え、ユーザーとの関り方が斬新。自分たちの取材の過程などを全て公開して、読者の方々にも編集部に入ってもらっているような感じで、ディスカッションしながら記事を作っているんです。
これはかなり高度な技で、コメントで参加していただく形の上を行っています。ここまで組み込んでいけるメディアが日本にも出てきたら、注目に値しますね。

ビジネスに関しては、記者よりも編集者よりも、明らかに現場にいる人のほうが詳しいんですよ。広告業界をカバーしている記者より、電通で働いている方のほうが、明らかに広告業界に詳しいじゃないですか。詳しい人を巻き込んでコンテンツを作ったほうが、絶対にいいものになる。ただ、多くの記者はいろんな人を巻き込んでコンテンツを作るのはあまりうまくないですね。

服部
今までのスキル設計とは違い、専門性を持った上での巻き込み力が必要ですね。

佐々木
そう、両方とも必要なんです。学校の先生に求められている変化に似ていますね。今はネット上に知識は溢れているので、先生が知識を独占して上から下に与えれば良かった時代は終わりました。
先生には、ファシリテーターとなって皆が出すアイデアや意見をまとめる司会者のような役割が求められています。記者にも部分的に同じようなことが言えます。司会者としてまとめるためには、皆に一目置かれなければならないので、専門性も必要。記者に求められることが多くなっている時代ですよね。

服部
最初に巻き込まれたプロピッカーの方々によるフィードバックや反響をもとに、NewsPicksがこれから目指していくものは何ですか?

佐々木
ピッカーの方で有名になる人も出てきましたので、課題としてはもっとピッカーの方々をうまくプロデュースしていける機能が我々に求められています。ただ単に「コメントしてください」だけだと、飽きられてしまうと思います。
記事も書いていただくとか、我々から売り出し方を提案させていただいて、他のメディアにも躍進していってもらえるような、「ビジネス界のタレント事務所」のようになっていくべきだと、私は思います。

服部 自分のメディアで有名になったら出て行って欲しくないと思うのが普通のメディアの考え方だと思うのですが、どんどん売り出していこうと?

佐々木
それでいいと思います。NewsPicksに上がるコメントも著作権フリーにして、誰でも引用していいような形にできるといい。最終消費じゃなくても、全てはここから生まれる、「ビジネス界のタレント事務所」です。タレントを独占することはせずに、「ここにいると何かが育つし、楽しい 」という感覚を大切にしていくのが、一番理想的なのかなと思います。

 

メディア&広告界に大戦略を

服部
本業がこれだけお忙しい中、著書を出版されていたりもして、バイタリティに溢れていますよね。

佐々木
本には人を変える力があることを実感していますので、せっかく執筆を仕事にしているのだから、定期的に書くことはある種の義務だと思っています。
私は「日本を良い国にしたい」という思いが強く、昔は政治家を目指していました。今は政治ではなく、文字やメディアの力によって、日本社会を少しでも面白く、良いものにしていきたいと思っていますね。また、書くことは自分へのトレーニングでもあります。本を書くと自問自答にもなりますし、本当に鍛えられるんですよ。

服部
専門である経済のことだけではなく、リーダーシップや生き方など広範囲のことをテーマにわかりやすくまとめられているので驚きました。

佐々木
自分の専門以外のことを語るとリスクもあるのですが、逆に専門家だけにある分野を委ねてしまうと、大局観のある意見や、外からだからこそ見える意見がなくなってしまいますよね。
日本の国家や、いろんな分野のリーダーたちも、重箱の隅をつつくような議論より、もっと大きな大戦略や思想的な議論をすべきだと思います。そうしないと、いつまでたっても上の世代を超えられないのではないでしょうか。

服部
そういう意味では、NewsPicksはメディアの中で今までとは全く違う戦い方を実践してみせているという自負がありますか?

佐々木
まだまだですね。おこがましいのですが、私がやりたいと思っているのは福沢諭吉モデルなんです。彼は、時事新報という当時最大のメディアを作り、『学問ノスゝメ』という大ベストセラーを生み出し、かつ慶応義塾を作って人を育て、交詢社という社交場を作り、そこに政官財のリーダーを集めて社交させました。そこから生命保険会社であるとか、今に繋がる様々な事業が生まれたんですよね。
これらを現代版として再現して、新しい時代の日本経済の礎を築くというのが、当面の私のライフビジョンです。

服部
NewsPicksがそれをやると聞くと、何か新しいものが生まれそうで、とても魅力的でワクワクします。

佐々木
電通には、古き良きものを支えながら新しいものも押さえて融合させる役割を担ってもらえるとありがたいです。電通は両方できると思います。お互いが高めあえたらいいなと常々思っていますので、ぜひ今後もよろしくお願いします。

<了>

 

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