HOME メディア 徹底的なユーザー目線で本音のレビューを届けたい 晋遊舎 『LDK』編集長 長 恵理子さん 『360.life』編集長 冨田 岳さん
2018.11.12

徹底的なユーザー目線で本音のレビューを届けたい 晋遊舎 『LDK』編集長 長 恵理子さん 『360.life』編集長 冨田 岳さん

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ビジネスと『LDK』のスタンスを両立させる難しさ

—誌上で製品テストをするといえば、古くは『暮らしの手帖』が始めたと思うんですが、意識していらっしゃいますか?

長:創刊時の編集長は『暮らしの手帖』のような雑誌を作りたいと思っていたようです。『LDK』の立ち上げの時に「バックナンバーを全部買って」と言われました。『暮らしの手帖』に、トースターの検証でパンを1000枚焼いたという記事があって、編集長が「それをやってほしい」って言ったんです。「これだけ検証しました」というのを、やりたかったみたいですね。

 

—御社の雑誌は、どれも時代に合わせた見せ方をしているように感じますね。『LDK』を出し続けてきたなかで、読者以外に反響はありますか?

長:最近、「『LDK』で“ベストバイ”に選ばれました」という『LDKベストバイマーク』をメーカーさんにお売りするという、認証ビジネスを積極的に展開しています。

 

—そういうビジネス展開は当初から見越していたのでしょうか?

長:いえ、ここ1、2年ぐらいですね。最近になってメーカーさんの方からそういうお話があり、「こういうところにもビジネスチャンスがあるんじゃないか、もうちょっと展開してみようか」みたいな感じです。
こういう流れって、雑誌が浸透してきた証なのかもしれませんね。ユーザーさんが店頭で迷ったときに、ベストバイのマークが商品を選ぶ目印になってほしいですね。

 

—メーカーから圧力がかかったことはありますか?

長:よく聞かれるのですが、意外とないですね。メーカーさんから「どういう検証しているんですか?」と尋ねられたりはします。こちらも、答えられる範囲でお答えしていますね。

メーカーさんから企画の持ち込みなどは、たまにあるのですが、お断りしています。あくまで「みんなが選んだ」というスタンスですから。弊社の広告部の人間は、ランキングが出てからでないと、ベストバイマークをメーカーさんに売り込みに行くことができないので、やりづらいと思いますよ(笑)。

 

—広告会社が間に入ったりはしないんですか?

長:それはあります。「ベストに選ばれた商品をプロモーションするのに協力してもらえませんか?」というオファーがあったりしますね。現在、具体的に進めているということは、まだありませんが。

これまで築き上げてきた第三者的な立ち位置を大切にしなければならないと考えています。もちろん、雑誌の売り上げプラスアルファをいかに取るか、というのも取り組まなければならないんですが、やはり慎重に検討する必要はあると思っています。

 

『LDK』をはじめとするレビュー雑誌のコンテンツを集約する『360.life』

—では、『LDK』の長さんのお話を踏まえて、次にWebメディア『360.life(サンロクマルドットライフ)』の冨田岳さんのお話を伺いたいと思います。冨田さん、よろしくお願いします。

冨田:よろしくお願いします。

 

—まずは、『360.life』がどんなWebメディアなのか、教えてください。

冨田:『360.life』は、『LDK』『LDK the Beauty』『MONOQLO』『家電批評』など、晋遊舎の雑誌メディアコンテンツが集まる場所として作りました。ローンチしたのは2016年10月です。
弊社の雑誌は、「広告なしのガチンコテスト」という共通したコンセプトがあり、Webでもそのコンセプトを変えていない点が特徴です。雑誌はガチなのにWebでは広告を取っているということになると、雑誌の信頼も失うことになってしまいますよね。ですので、「消費者目線でのモノ選びを本気でやる」というスタンスをWebの世界でも貫いていく、チャレンジだと考えています。

 

—サイト運営は何名で行っているのですか?

冨田:外部にお願いしているライターさんはいますが、社内の編集者は現在4人です。みんな、もとは雑誌の編集部にいました。私は『家電批評』で6、7年編集をしたあと、2017年1月から『360.life』を担当しています。

一日に公開する記事数は、平均で大体10本、多いときは15~20本です。Webメディアのなかではさほど大量生産系ではないと思います。

読者層としては、30、40代がボリュームゾーンで、3分の2は25~44歳といったところでしょうか。10代は10%程度の構成比になっています。
『360.life』は弊社の女性誌も男性誌もすべて扱っていて、読者層は男性と女性が大体半々、幅広い年齢層の方に読んでもらっています。珍しいことだと思いますよ。

 

—Webメディアに載せる記事はどのように作成しているのですか?

冨田:雑誌に掲載した記事をベースにして作成しています。雑誌と評価が変わらないようにすることをかなり意識していて、「『LDK』であの製品は良いって言っていたけど、『360.life』ではイマイチって評価している」ということにならないようにしています。テストの結果は雑誌に準拠し、場合によっては写真やテキストを加えてサイトに上げていくというのが、基本的な制作スキームです。

 

読者も、特性も、雑誌と異なるWebの強みを活かす

—雑誌と全く同じというわけではないんですね。

冨田:雑誌とWebではお客様が全然違う。反応も、読者それぞれのリテラシーも、年齢も違います。女性読者が多い『LDK』の記事を掲載するにしても、テストの結果は雑誌と同じですが、『360.life』は男性も見ることを考慮して、表現や見せ方はカスタマイズしています。

『360.life』に『LDK』の記事を載せるとしても、見てくださる方は雑誌の『LDK』自体を読んでいる人とは限りません。『LDK』の誌面なら、「読者は『LDK』のことを知っていて、テストや雑誌のブランドに魅力を感じて読んでくれている」という前提のもとで記事を作っているところがあるので、雑誌ではいろんなことが省略されています。

たとえば、『LDK』で洗剤のテスト記事を書くなら、「読者はすでにいくつかの洗剤のブランドを知っているし、特徴もわかっているうえで、どこがいいのか知りたがっている」ということを念頭に記事を書くので、読者が知っていると思われることをわざわざ書かないこともある。でも、『360.life』は弊社の雑誌を知らない、あるいは雑誌を読む習慣そのものがない方にも見ていただくので、本当に基本の「き」から、老若男女、誰にでもわかるように書かなくてはならない。そこが雑誌とWebの大きな違いです。

また、商品発売のタイミングに合わせた記事公開も、雑誌では難しいですがWebなら対応ができます。たとえば、目玉の新製品の発売日当日に、その製品の専門家など有識者を呼んで、テストとレビューを行うということを始めています。スピードを活かしたことを計画的に組み込むようにしていて、そういうのはやはり反響も大きいですね。

 

究極は一人ひとりのユーザーのためのベストを勧めること

—Web媒体を始めたことで、読者のリーチが広がっているという実感はありますか?

冨田:リーチを広げたり、コンテンツとしての販路を広げたりするのも目的ではあるのですが、「ユーザーに合ったベスト」を提供することが『360.life』のコンセプトです。「万人におすすめできる最高の一品」を提示するのが、『LDK』での“ベストバイ”だと思うのですが、実際は、ユーザーというのはワガママなもので、1位になっている商品に対して「私はそれ買わない」ということが頻繁に起きます。

メールなどでユーザーさんからの反応をいただくのですが、そこで出てくる声というのが「私に合うベストを紹介してほしい」というもの。そうしたニーズに応えるには、普遍的な「雑誌」という媒体よりも、流動的に作れる「Web」のほうが向いているのかなと思いますね。

 

—一人ひとりのユーザーに応じて、ということですね。

冨田:はい。究極的なユーザー目線というのは、「一人ひとりのユーザー目線」ということ。例えば『LDK』の場合、ユーザー目線といっても今はまだ主婦というカテゴライズしかありませんが、それがさらにパーソナライズされて、対一人ひとりの目線に立つことが実現できるサイトになれば、モノ選びの場所としては最強。そこを目指しています。

今年9月に、スマートニュースさんから「チャンネルプラス賞」という賞をいただきました。
アプリ『SmartNews』のなかで『360.life』のチャンネルがあって、そこに33万人ぐらい登録していただいています。もともと『360.life』が持っていたペルソナとかユーザー層が『SmartNews』とよく似ていて、そうしたことも多くの方にチャンネル登録していただけた要因かなと思います。本当にうれしいですね。

 

—Webをやっていて難しいと感じる部分はありますか?

冨田:記事をたくさん読んでもらうことと、媒体のブランドを周知させることがイコールではないという点に、Webの難しさを感じます。『360.life』の記事を読んでいただける人数は増えていますが、『360.life』の記事であることを理解して読んでいただけているかは別です。

プラットフォームの上に雑誌やWebなどのメディアがあるという状態ゆえに起きる問題なのですが、そこが悩ましいところで、ユーザー目線という視点で考えると、必ずしもメディアである必要はないんです。誰かが何かを買いたい場合、買って後悔しないための情報を出す場にさえなれば、雑誌やWebのメディアでなくても、アプリでも他のサービスでも、情報提供の場はどんな形でもいいと考えています。記事をたくさん読んでもらうだけでなく、今後は『360.life』を知ってもらうことにも力を入れなければと思います。最終的にはモノ選びのコンシェルジュになりたいですね。

 

ユーザーの消費行動に不可欠な存在になりたい

—それでは、おふたりそれぞれで、今後の課題や、やってみたいことをお教えください。

長:女性誌には巨大な競合誌がたくさんあるなか、『LDK』は徐々に認知度を上げ、部数も増やしています。安定した数字が見込めるのは、固定ファンの方がいらっしゃるからだと考えています。一方で、『LDK』は特集によって、数字が上下することがあり、固定ファン以外の方も「表紙を見て、気になったら買う」というケースがあるのでしょう。女性誌で一番になれるよう、ジャンルを増やしたいし、チャレンジもしていきたいですね。

冨田:モノを買うときに、我々のサイトに立ち寄って相談してもらえるようなコンシェルジュを目指したいですね。買う場所は、アマゾンでも量販店でもどこでもいいんです。ユーザーがモノやサービスを選んだり、生活で変化が起こったりするときには必ず立ち寄ってもらい、消費行動にいたる前のハブのような存在になれればと思います。

 

—本日はありがとうございました。

 


■晋遊舎 雑誌『月刊LDK』編集長 長 恵理子さん
2009年、晋遊舎に入社。『家電批評』を経て、2018年『LDK』編集長に就任。

■晋遊舎 Webメディア『360.life』編集長 冨田 岳さん
2011年、晋遊舎に入社。『家電批評』を経て、2018年から『360.life』編集長に就任。

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