HOME メディア 【 ラジオ レコメンダー“ やきそばかおる ”の I love RADIO】~ ラジオってこんなにおもしろい! AI活用の可能性と、ラジオの進化論 ~
2018.10.19

【 ラジオ レコメンダー“ やきそばかおる ”の I love RADIO】~ ラジオってこんなにおもしろい! AI活用の可能性と、ラジオの進化論 ~

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ラジオ レコメンダー“ やきそばかおる ”の I love RADIO  第10回

やきそばかおる

ライター・構成作家、そして大のラジオファン。1975年山口県生まれ。
radiko.jp」をはじめ、雑誌やWebなどでラジオに関するインタビューやコラムを執筆中。
10月よりMBSラジオのナイターオフの番組『次は〜新福島!第2章=芽生え=』木曜のコーナー「やきそばかおるの全国ラジオキコウ!」に出演中。


当メディア「Synapse」でも人気連載コーナー【ラジオレコメンダー“ やきそばかおる の I love RADIO】を執筆していただいている、やきそばかおる さん。毎回ラジオへの深い造詣と愛情で、今聴くべきラジオ番組をご紹介いただいています。今回の対談では、ラジオ 業界にも浸透しつつあるAI活用の実際と見えている課題について語っていただきました。最後には、10代に聴いてほしいラジオ番組もご紹介。ラジオ 愛あふれるトークをお楽しみください。

 

AI活用の第一段階は、放送内容のタグ付けとデータベース化

― ラジオ でAIの活用が始まっていますが、最近の動向で目新しいものがあれば教えてください。

昨年はJ-WAVEの『INNOVATION WORLD』でAIアシスタントTommyが起用されたり、TBSラジオ『AI時代のラジオ 好奇心プラス』ではどっち君が活躍したり、今年の夏からはKBCラジオの『居酒屋清子』でAIスピーカーを使った取り組みを始められたりと、いろいろな種まきがあります。

『居酒屋清子』はAmazonのAIスピーカー「echo」のアレクサ・スキルを使って、女将の清子さんと話ができるというもの。まだ活用法としては模索中の感もありますが、過去の放送の傑作選を聴けるというのはとてもユニーク。この先発展させて、しゃべっている内容をタグ付けし、キーワード検索のようにラジオ音声を検索できればもっと面白くなりそう。例えば『居酒屋清子』で「イカの一夜干しがおいしいお店について、しゃべっている音声が欲しい」と思ったときに、検索できるといった感じで。

今年の夏に起きた水害で、広島では夜通し生放送の報道特別番組を組んでいました。2014年にも大きな水害があり「あのときはこんなことがあった」とか、過去の放送を検索できれば紐解くことができるわけです。更に部分的な抽出ができれば、ある地区のレポートとか、欲しい部分だけ抽出できる。何日間断水した、停電したということもわかって、今後、情報を伝えるための参考になると思います。

今、「書き起こしサイト」を運営しているラジオ局がたくさんあります。TOKYO FMやJ-WAVE、ニッポン放送のほか、名古屋のCBCラジオなども追随しています。番組の内容やゲストを記事として出して、radiko.jpに誘導してPRするためのものだったんですが、今後はAIと融合するための手段として、書き起こしサイトのテキストが活用できる日が来るのではないかと思っています。

radiko.jpで聴ける過去の放送の中で、あるアーティストが出た部分を聴きたいとなったときに、その部分だけの検索はできません。そのアーティストが出る番組を丸ごと聴く必要があります。そこで、書き起こしサイトの文章と音声をリンクさせて、AIスピーカーで「○○というアーティストの部分を聴かせて」と要求することができるようになるのではと期待しています。これが可能になれば、アーティストがどの番組に出ているかわからなくても、ポンと聴きたい部分にたどり着ける。もちろん、番組全体を聴いてもらうことが理想ですが、ラジオの中でAIを活用して、ラジオを聴くきっかけにつながると思います。

やきそばかおる

 

AIを使った番組作りのアイデア

なるほど。アーカイブ機能がAI活用の第一段階のイメージですね。第二段階はどうお考えですか?

なかなか想像するのは難しいところですが…。
遊びの一例として、先日、BSSラジオ(山陰放送)のワイド番組『午後はドキドキ!』で、AIスピーカーを使って遊んでみよう、という企画をやっていました。その番組ではAIスピーカーに質問したいことをリスナーに募集していたんです。「カエルの鳴きマネを聴かせて」ってスピーカーに話しかけたら、本当のカエルの鳴き声を再生していましたが、「よくわかりません」って返される質問も多かったんです(笑)。このときは盛り上がっていたのですが、生放送で実施すると何をしゃべるか分からないというリスクがあります。しかし、これから先、もっといろいろな活用の仕方ができるのではないかと思います。

―SNS活用についてはいかがでしょうか?

放送中にツイッター上で話題になった部分を“瞬間最高聴取者数”のような形で番組内で取り上げる、といったこともいいのではと個人的には思っています。「全国的にはこの部分、ある県ではこの部分が反響ありました」という感じです。

また、他の地区の ラジオ で反響があった話題がわかると、他の地区のおもしろいラジオ番組を知るきっかけにもなりますね。今までは自分で探すしかありませんでした。それを機械がやってくれるイメージです。もちろん、刺激的なものばかり話題になってしまう危うさもありますが。

とにかく、AIとラジオの関係って今はまだ「なんだこれ?」という手探り段階だと思いますね。

 

AIは現場の人手不足を救えるか?

他にもAIを ラジオ で活用する方法はありますか?

 西日本豪雨のとき、RCCラジオ(中国放送)、RSKラジオ(山陽放送)、南海放送などは災害に関する情報を逐一伝えていた一方、放送地域にある川が氾濫するような状況であっても、24時で放送を終了してしまうラジオ局もありました。
「いざというときはラジオを聴きましょう」と訴えているものの、このような状態では「 ラジオ なんて役に立たない」ということになってしまうのではないでしょうか。
ラジオの現場に人が少ないとはいえ、エフエム和歌山(Banana FM)のAIアナウンサー「ナナコ」みたいなシステムがあったら、もう少し違ったかもしれません。

ラジオ業界の人手不足は深刻なんですね。

そうです。他にも某ローカルFM局で10代向けの番組を担当しているパーソナリティーは、「とにかく人手が足りない」とおっしゃっていました。「本当はもっとたくさんの学校にインタビューに行きたいけれど、別の仕事ができなくなってしまうから行ける数が限られてしまう。せめて、もう1人スタッフがいればメールの仕分けやスタジオ業務をやってもらえるのに」と。

やきそばかおる

 

 メールの仕分けなんかはAIを活用できそうですが?

災害が発生した際、ラジオ局には情報がSNSやメールなどがたくさん寄せられ、スタッフがどんどんチェックしていきますが、その情報の真偽を確かめる術がないこともネックになっているといいます。

また、SNSに上がった写真は、それが過去のものだったり、コラージュしている写真だったりしても判断ができない。そこで、メーカーが写真の真偽をAIの技術で検証できるようなシステムの構築を進めています。その写真が別のところで撮ったものじゃないか、過去のデータと照合したりして。

ラジオ・テレビ関係なく、放送局が災害専用アドレスみたいなのを開設し、それを警察とかにも連結させたり、情報の検証をAIと一緒にやったりといった仕組みがあればいいのではないかと思います。ひとつの番組で、2、3人のスタッフでやってもキリがありませんから…。

放送局の人手不足というのは、どの局にも共通した大きい課題なのでしょうか?

ローカル局の人手不足の話や予算削減の話と繋がっている話だと思いますが、ラジオカーも廃止したラジオ局もあります。とあるローカル局は、以前は3台持っていたのですが、20年ほど前に手放してしまいました。ラジオカーを使わなくなってからは、ワイド番組を聴いていても、奥行きがない気がして、何か物足りなくなってしまいました…。

前回もお話しましたが、西日本災害が起きてしばらくの間、RCCラジオのラジオカーは避難所やボランティア関係者を訪ねてくまなく巡回して毎日レポートしていました。ラジオカーのレポーターの皆さんも大変だと思いますが、リスナーにとっては心強いと思います。

やはりラジオカーの機動力や速報性は魅力ですよね?

TBCラジオ(東北放送)の『ロジャー大葉のラジオな気分』という番組でのこと。仙台にある老舗洋菓子店が店を畳むことになって、最後の営業日にラジオカーで向かって、そのお店から中継をしていました。お客さんにインタビューをしていると、そのラジオを聴いて閉店を知ったという人が集まってきて、そのお客さんにも話を聞いていました。

こういうことは人手がないとできないんですよね。人手が足りないと、スタジオと店を電話でつないで話を聞いて終わりになっちゃう。こうした中継ができるのは理想だと思います。

 

AIが出来ること、人間にしか出来ないこと

慎重になりつつもAIを導入する流れは確かに存在すると思うのですが、現状のAI活用の課題を教えていただけますか?

先ほどちょっとご紹介したエフエム和歌山(Banana FM)のAIアナウンサー「ナナコ」は、災害情報などのテキストで入力されたものを読み上げることができます。また、CBCラジオで導入されている、バーチャルアナウンサー「沢村碧」は、イントネーションも自然で滑らかなので驚きますが、AIが怖いのは、常識が通用しないところ。「空気を読む」といったことは、今の時点ではできないそうです。

たとえば、「これは言っちゃダメ」っていう判断をするのは人間。放送禁止用語のようなものは登録しておけばいいのですが、「この表現はちょっとストレートすぎるな」みたいなのはAIには難しい。例えば、殺人事件のニュースを事細かに説明されると引いちゃうじゃないですか。人間なら「殴られました」で止めておくところを、AIだと「殴られて、血が出て肉が飛び散って…」みたいなところまで伝えてしまって、「そんな残酷な表現をするなんて」といった具合になることも考えられます。現在は、伝える情報の取捨選択を人間がする必要があります。

「ナナコ」はいろんなラジオ局が視察に訪れているそうですね。

コミュニティFM局がAIアナウンサーを導入したという点で、いろんな局が興味を持っています。番組にAIが出てくると、生放送で何をしゃべりだすかわからないから使いにくいと言いましたが、選曲とか、人の手間がかかっているところを代わってあげるといったような裏方の仕事だと活用しやすいのかもしれません。放送に乗らないところで、サポートしてくれます。

 J-WAVEの『INNOVATION WORLD』ではIBM Watsonを活用し、リスナーからの「○○な楽曲教えて」という漠然としたリクエストに応えて選曲をする「漠リク」を行なっています。先ほどの人手不足の話と関係しますが、地方局だと選曲するにも人的リソースの確保が難しい。そこをAIに任せてしまうのはひとつの手段だと思います。

確かにAIは選曲などの裏方作業に向いていそうですね。

以前、ピーター・バラカンさんがとあるインタビューで「今の日本のラジオは、知っている曲しかかけていない。理想は知らない曲が7割、知っている曲が3割なのに、逆になっている」とおっしゃっていました。確かに、ラジオ局を変えても、同じような曲がかかっていることはあります。たとえば、「今月、この放送局で1回もかかっていない曲を教えて」とか、「この1年間、どこのラジオ局でもかかっていない曲」をAIがピックアップできるようになると面白いかもしれません。

ただ、あまりAI任せにしていると、人間の技術、人間の勘という部分が継承されなくなってしまうのも事実。知識や経験が継承ができなくなってしまうのはもったいないですね。

 

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