HOME マーケ ひとり暮らしの女性の自活・自立を助けるサービスを。 不動産会社の枠を超え、つねに寄り添う存在へ。~ 株式会社エイブルホールディングス「MAISON ABLE」ブランドマネージャー 赤星昭江さん ~
2021.8.23

ひとり暮らしの女性の自活・自立を助けるサービスを。 不動産会社の枠を超え、つねに寄り添う存在へ。~ 株式会社エイブルホールディングス「MAISON ABLE」ブランドマネージャー 赤星昭江さん ~

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女性ならではの「生きづらさ」を可視化することが大切

 

編集部 企業がやるべきことはフェーズが変わってきていて、利益追求だけではなく、どれだけ社会に貢献できるかという段階になってきていると感じています。

赤星 そもそも単身女性をどう支援していくかは社会問題だと思います。

実際に単身女性は増えていて、2015年には870万人でしたが、2020年には900万人になり、2035年には950万人になると予想されています。女性に限らず、2035年には国内世帯のおよそ半数が単身世帯になるとの予想もあります。(出所:国立社会保障・人口問題研究所推計)
そして、単身女性の経済状況をみると、就業率は7割以上で世界的に見ても高いのですが、生涯年収は男性の7割程で賃金格差があるのは明らかです。

こうした状況を踏まえて、企業としてできることは何かと考えたときに、ひとり暮らし女性の生活をサポートすることでより豊かな社会の実現に繋がると考え、「MAISON ABLE」を運営しています。

編集部 企業として真剣に取り組んでいらっしゃるのが伝わります。

企業として私たちができることは何か?と考えてみると、そのひとつがデータを分析して問題提起をするということが挙げられると思います。以前記事にもしたのですが、女性の働く意欲は年齢別に見たときに男性に比べてアップダウンがあることがわかりました。

女性はライフステージによって環境が異なるので、同世代であっても考え方や悩みがまったく違うということはありますよね。母や妻、仕事など複数のチャンネルを持つがゆえに、悩みも多層的です。似たような環境であっても多少状況が違えばそれぞれの立場で異なる悩みが存在するでしょうし、それらに対して社会全体で向き合っていくことも必要ですよね。

 

赤星 おっしゃるように、単身女性でも一人ひとり状況が違いますね。実家暮らし女性とひとり暮らし女性にアンケートをして、女性たちのリアルな状況を定期的にメゾンエイブルレポートとしてリリースを配信しています。彼氏がいる率が高いのはどちらか、副業はしているかなども調査していますが、リアルな生活状況や抱えている課題が見えてきて興味深い内容になっています。

そして、意外とユーザーからの反響で多いのが、アンケートに答えることで「モヤモヤしているものが整理できた」という声。結婚したいのか、同棲したいのか、恋人はいるのかといったアンケートに答えることで、「本当に結婚ってしたほうがいいのかな」とか「自分は子ども欲しいのかな」という気持ちを整理できると。

また、アンケート結果の記事を見て、自分と同じ考えの人は多い、マジョリティだと安心する人もいるようです。友達同士であっても、独身か既婚か、働いているか専業主婦なのか、子どもはいるのか、貯金の額や投資の運用など生活スタイルが様々なので本音が言いにくい。ユーザーの抱えている問題をできるだけ可視化して、それに応えていけるようなサービスが提案できたらなと思っています。

 

編集部 問題解決が進みそうで期待が持てます。
活動を行うにあたって大切にしていることはありますか?

赤星 大切にしている考えとして、「ひとり暮らし女性を応援する」ということは、いろいろな企業や顧客と共にブランドサービスを作り上げていくことが必要だと考えています。

そして、精神性として大事にしているのが「レジリエンス」。つまり、困難や逆境に陥っても精神的に揺るがない、しなやかな軸を持てるように支援していくのが目標ですね。

 

 

テレビは寄り添ってくれる存在。だからこそ多様性に配慮した表現が求められる

 

編集部  広告でコミュニケーションするときに気を付けていることはどんなことでしょうか?

赤星 伝えたいメッセージやターゲットによって、新聞やSNS、インフルエンサーなど、アプローチは変えています。テレビは影響力も大きいので、「MAISON ABLE」というブランドをどう打ち出していくかは慎重に考えています。最近はSNSで拡散されて、それがメディアで取り上げられるパターンも多いですよね。私たちの取り組みもそのようにエスカレーションしていくといいなという期待はあります。

 

編集部  2021年1月、朝日新聞に掲載された広告「『女性初』がニュースじゃなくなる日まで」は、いろいろなメディアでも取り上げられましたよね。反響はいかがでしたか?

▲2021年1月に掲載された新聞広告

赤星 あの広告はアメリカで女性初の副大統領に就任したカマラ・ハリス新副大統領の就任式に合わせて掲載したものですが、ジェンダーに触れる内容であったことから、様々なご意見を頂くことは覚悟していました。

ご意見の中には批判の声もありましたが、私たち自身もこれから変わっていこうとしている表明でもありました。エイブル女子割については現在の経済格差の課題や女性はセキュリティ面でも住居に費用が発生すること等からも、安心して新生活をはじめて欲しいという想いから実施しているものです。

ジェンダー文脈での意見広告で多様なご意見もいただきましたが、真摯に受け止めつつ意見広告の掲載は意義のあるものだったと捉えています。

編集部 ジェンダーに関わる話題は非常にデリケートで難しく、どんな表現でメッセージを発信するかが重要ですよね。以前、家事を表現したテレビCMのクリエイティブの変化をテーマに分析したのですが、年代を追うごとに家事の主体を女性だけでなく男性にしている企業も増えていて、その企業が生活者にいかに寄り添っているのかが広告で可視化されたように感じました。

赤星  特にテレビは大勢の人に届くメディアなので、特定の層に刺さればいいというのではなく、多様性を理解して誰も傷つかないような配慮が大切だと思います。

それに、テレビは寄り添ってくれている感じがありますよね。子どもの頃、家にいるときは必ずテレビがついていましたし、今でも家に帰ってくると最初にテレビをつけます。

YouTubeやSNSも好きで見ていますが、仕事で疲れていたり、精神的に落ち込んでいたりするときは見るのが辛くなることもあります。おそらく距離感が近いからだと思います。テレビの向こうは自分とはまったく違う世界ですが、SNSは身近な存在なので自分に引き寄せて考えてしまう。その点テレビは一線が引かれている分、居心地の良さを感じることができるのだと思います。

 

編集部 確かにテレビは、単にひとつの媒体というより、公共性の高いメディアなのでそうした特性はありますよね。メディアの価値はどれくらいの人にリーチできるかといった議論に終始しがちですが、そもそも生活の中でどんな存在価値があるのかを見極めることも必要かもしれませんね。

 

ライフスタイルの変化に合わせたサービスを提供したい

 

編集部 コロナ禍で生活者の意識も変わってきていると思いますが、現状や今後についてどのように捉えていらっしゃいますか?

赤星 実は今年2021年1月にブランドリニューアルをして、「MAISON ABLE」は当グループ会社エイブルでの契約者の方以外でも、国内でひとり暮らしをされている女性の方であれば、どなたでも入会できるように変更しました。

アンケートで現在ひとり暮らしの女性に調査すると「明日食べるものも不安」という声も聞こえてきて、支援の幅を広げたいと考えたからです。あわせて経営的な面でいうと、不動産賃貸市場はコモディティ化しており、物件以外の付加価値を社会課題解決と紐づけて経営強化していきたいという考えもあります。

編集部 単身世帯はもちろんですが、コロナ禍で住環境を見直そうという動きがありますよね。

赤星 最近の傾向では、単身世帯だけでなく子どもがいない世帯などは、結婚後も賃貸を利用している人が増えています。コロナ禍で働き方が変わって、住みたいときに住みたい場所に住むというライフスタイルが可能になり、「家を買う」ことが絶対ではなくなっていると思います。こうした考え方は年々増えていた実感はありましたが、コロナ禍でそれが加速した印象はありますね。

編集部  郊外に引っ越す人も増えていますし、家で過ごす時間も長くなって生活の質を考えるようになっていますよね。赤星さんが今後やっていきたい取り組みなどはありますか?

赤星 いろいろあるのですが、引越しする際に不要となる家具などを引き継げるシステムがあったらいいなと思っています。実は、私が住んでいる部屋は窓が大きくてカーテンをオーダーメイドしたのですが、引っ越すときには多分捨ててしまうので次に住む人に譲れたらと。初日にカーテンがないと危ないですから(笑)。

編集部  無駄なものがなくなるし廃棄も減らせて、いいですね。
インタビューを通じて、「ひとり暮らしの女性を応援する」という赤星さんの熱い想いが伝わりましたが、その原動力とは?

赤星  入社当時に感じた、ひとり暮らしの大変さ、なぜこんなに格差が生まれてしまうのかという気持ちが活動の原動力になっています。そして、一度決めたことはやり通す、“継続”と“信念”を大切に、誠実に仕事をしていこうと思っています。

編集部  当社も生活者のために何ができるのか、考えていきたいと改めて思いました。今日はありがとうございました。

 

<了>

 

★話題のマーケターへのインタビュー企画、第1回第2回も是非ご一読ください。

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