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2018.10.10

エンタメを極めるDDTプロレスリングの独自性 Vol.2

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(左から) 電通 服部 展明氏   DDTプロレスリング 高木 三四郎氏


前回の記事はこちら(vol.1)

 

DDTを成功へと導いたキャラクタープロレス

服部
常に新鮮なアイデアで観客を楽しませてくれるDDTですが、そのアイデアはどんなところから生まれてくるのですか?

高木
もちろん、普段から選手のマッチメイクや試合展開など、どうすれば少しでも面白くなるかを考えていますし、僕だけでなくスタッフで会議して、互いにアイデアを出し合ったりしています。ただし、実践することを決めたアイデアがあっても、選手がケガをして実現できないこともあるので、その時々に合わせて臨機応変に対応することが重要です。

服部
DDTは、なんといってもキャラクターが立った選手の面白さが特徴です。

高木
やっぱりお客さんにウケるキャラクターを生み出せるかどうかは非常に重要です。なぜなら、キャラクター次第で、従来にはなかった技や試合展開が生まれたりして、プロレスの幅も大きく広がることがあるからです。

例えばDDTにかつて所属していたポイズン澤田さんは、DDT所属前に「マムシデスマッチ」で注目を集めましたが、その後はなかなかブレイクのきっかけが掴めずにいたところ、僕のところにきて「まだプロレスがやりたい」と相談に来たんです。
そこで、「マムシに噛まれた男」というキャッチフレーズで売り出そうとしたんですが、それだけだとどうも弱い。
何かないかなあと考えていたときに、たまたまテレビでやってた『魔界転生』という映画を見たんですね。その中に、沢田研二演じる主人公が「呪文」を使うと相手が金縛りになるシーンがあって、「これは使える!」とひらめいて…。そこで“さわだ”つながりで「ポイズン澤田JULIE(ジュリー)」に改名し、試合中に呪文を使うと、なぜだか相手の動きが止まるという必殺技が生まれたんです。

服部
なるほど、あの伝説の呪文は、そうやって生まれたんですね。あれはプロレスファンの間でも大きな物議をかもしましたね(笑)。

高木
最初は観客に受け入れられるかどうか不安もあったんですが、お客さんに非常にウケて、すごく話題になりました。いまだに「あの呪文は本当に効くのか」って本気で聞かれることがありますが、実際に呪文は効くんですよ!!(笑)。

服部
そもそもプロレスには、「あの技は本当に効くのか」「なぜみんなあの技をよけないのか」といったプロレスならではのファンタジーがたくさんあります。その意味では、呪文によって相手の動きが止まることもギリギリ“あり”、ということですよね。それによって、試合の流れや局面が面白くなれば、それはそれで良しなのだ、と。

高木
お客さんもいったんそれを受け入れると、この試合ではいつ呪文が出るのかと期待して、いざそれが出たときには大いに盛り上がります。実際に、澤田さんもすごい人気になって、DDTのエンタメ路線を広げていく上で、重要なキーパーソンとなりました。まあ、ある意味では、従来のプロレスの範疇を大きく飛び越えた存在になって、それ以降のDDTのキャラクターづくりに大きな影響を与えたと言えると思います。

 

あえて他の団体の逆を行くことが、DDTの成長戦略

服部
ポイズン澤田さんの呪文は、まさに他では決してやらないことをあえてやるDDTのスタイルが如実に表れた例ですよね。

高木
メジャーな団体と同じことをしていても勝てないですからね。

服部
それとDDTがスゴイなと思うのは、1990年代後期~2000年代初期にプロレスや格闘技がどんどんビッグビジネスになっていって、東京ドームなどで次々とイベントをやっていた時代にも、あくまでマイペースな姿勢を崩さなかったところです。広告業界にいる身からすれば、あれだけ周囲が盛り上がっていると焦ってしまうと思うのですが…。

高木
ドームに進出するようなメジャー団体とは、資金力も知名度もかけ離れていたので、特に焦りはありませんでした。
所属する選手からして、メジャー団体の場合はアマレスや柔道の世界で好成績を残したようなエリートの人材が多いのに比べて、僕たちは大学生がサークル活動としてやっている「学生プロレス」の出身者がほとんどでしたし。でも、実は学生プロレス出身者は意外にタフで技術もある人が多い。というのも、彼らは年間20~30試合を4年間もこなしてきていて、何気にキャリアがあるんです。

服部
じゃあ、これまでDDTを続けてこられて、ピンチというピンチはなかったですか?

高木
いや、それはありました。ちょうど2008年のリーマンショックのときです。それまでは比較的順調で、資金繰りに困ることもなかったのですが、初めて資金がショートしたことがあったんです。もちろん、銀行はプロレス団体なんかに融資してくれませんし、助けてくれるスポンサーもいません。
そこで、いちかばちかの勝負に出たのが、2009年に開催した団体初となる両国国技館での大会開催です。国技館のような大会場は使用料も高額なので、満員になれば利益は大きいものの、客入りが悪ければ赤字が膨らむリスクもあります。当時のDDTにとっては大バクチと言えましたが、選手・スタッフが一丸となってリング上を盛り上げ、集客に努めたことでこれが見事に当たってピンチを切り抜けました。
結果として、業界における知名度やステータスも一段と上がり、団体内の団結力も高まりましたが、ひとつ間違えば倒産していたかもしれない。まあ、運が良かったです(笑)。

服部
いやあ、それは運ではなくて、DDTがやり続けてきたエンタメスタイルのプロレスがコアなファンだけでなく、多くの人に認められたということだと思います。

高木
確かに、僕たちが追求していたエンタメ路線が、ある程度プロレスファンの間に定着したとは言えると思います。
僕が最初に入ったPWCの代表だった高野さんがよく言っていたんですが、プロレスはあくまでアメリカが発祥の競技であって、本来はWWEのようなショーマンシップを前面に出すスタイルが王道なんだということです。
その点、日本のプロレス業界は他の産業と同様に、ある種ガラパゴス化していて、エンタメ性よりも、強さや勝ち負けを前面に出すスタイルに偏っているんです。こんなスタイルは日本だけで、他の国ではどこもアメリカンプロレスがベースになっています。
でも、こうした特殊な環境だからこそ、僕らみたいなスタイルが逆に引き立つとも言えます。

服部
先ほど話に出てきたポイズン澤田さんが以前、新日本プロレスに参加したことがありましたよね。そのときに例の「呪文」をやるかやらないかがファンの間で話題になりました。いわゆるストロングスタイルを標榜する日本のメジャー団体を相手にして、エンタメプロレスの真髄とも言えるポイズン澤田さんの呪文は通用するのかと(笑)

高木
そんなこともありましたね(笑)。あのときはまさか新日本プロレスの会場で呪文はやらないだろうと思っていたら、澤田さんが勝手に呪文を使ってしまいまして(笑)、でも本番でやったら相手選手も見事に止まってくれたんです(笑)。呪文をやったときは僕らもゾッとしたんですが、お客様に受けて会場も大盛り上がりでした。
あの瞬間は僕たちのような弱小団体が新日本プロレスという大メジャーに一瞬だけでも勝ったと言えるかもしれませんね。

 

さまざまな枠を超えていく、DDTのチャレンジ精神

服部
DDTプロレスでは常に新しいことに積極的にチャレンジされています。例えば、リングを組まずに路上でプロレスをするという「路上プロレス」も、実に画期的というか、常識破りのスタイルですが、あのアイデアはどのように生まれたのですか。

高木
きっかけは僕が2008年に『俺たち文化系プロレスDDT』という自伝を出版したとき、本のプロモーションで何かできないかという話が出たんです。そこで、タレントや作家さんが本屋でサイン会をやるように「本屋でプロレスができないか」となったんです。
最初は、どうせ無理だろうと思っていたんですが、なんと本当にプロレスができる本屋さんが見つかってしまって(笑)。そうなればもうやるしかない。しかも、当日は200人ものお客さんが集まって、そうなると店内でやっていてもお客さんが見られないので、自然と路上に出てやることになったんです。それが路上プロレスの始まりです。

服部
それが今では「キャンプ場プロレス」や「工場プロレス」など、さまざまなバリエーションが生まれて、リング上での興行と並ぶ人気コンテンツになっているんですから、やっぱり高木社長の発想力、行動力は凄い!
また、DDTが凄いのは、先ほど出てきたポイズン澤田さんのような唯一無二のキャラクターが他にもたくさんいることです。とにかく、DDTの選手はキャラがものすごく立っています。

高木
やっぱり、プロレスはある意味でキャラクタービジネスですからね。まあ、僕たちが考えるキャラクター全部が全部、人気が出たわけではないですけど、常にどんなキャラクターが斬新でウケるかは考えています。
一番、わかりやすい例が「ヨシヒコ」というキャラクターなんですけど(笑)、これとプロレスラーが戦うんです。相手は見ての通り特殊な“体質”で、ある意味では人間を超えたキャラクターです。かつてプロレス界では「箒(ほうき)を相手にでも試合ができるのが名レスラー」という格言があったんですが、ヨシヒコ相手に試合を成立させ、なおかつお客さんを湧かせるには、まさにプロレスラーとしての技量が問われます。

服部
あれはスゴイですよね(笑)。人形であるヨシヒコに・・・

高木
いやいや、アレは人形ではなく「ヨシヒコ」です!

服部
あ、失礼しました(笑)。ヨシヒコに技をかけるのはまだしも、ヨシヒコにスープレックスで投げられてみせるのは至難のワザでしょう。

高木
僕にはできません(笑)。とにかく、ヨシヒコのような突拍子のないキャラクターを生み出せるのも、DDTならではと言えると思います。

他の面白い企画としては、2003年にマッスル坂井というレスラーの主導で始めた「マッスル」というイベント。当時、人気のあった「ハッスル」のパクリなんですけど、プロレスというよりも舞台のようなスタイルの興行で、試合中に突然、音楽が流れて選手の動きがスローモーションになったり(笑)。本家のDDTを超える自由奔放さで、一時はDDTを凌ぐほどの人気イベントになりました。

服部
マッスル坂井さんと言えば、試合前にパワーポイントで相手に勝つための戦略をプレゼンすることで有名なスーパー・ササダンゴ・マシンとして活躍されている方ですよね。

高木
そうです。初めてスローモーションをやったときは、僕も事前に聞かされてなくて「うわ、やられた。プロレス界のみなさんごめんなさい」と思ったんですけど(笑)、お客さんはドッカンドッカン喜んでた。で、スローモーションの理由を坂井に聞いたら「感動的な試合を見てるとスローモーションに見えてくるじゃないですか。それを再現しただけです」って言われちゃって。もうそれでいいや、自由にやってくれってなって(笑)。

服部
そうした部下の独創的な発想を自由にやらせているからこそ、いろんなアイデアが生まれてくるんでしょうね。

 

 

今のトレンドをチェックしつつ、昔からのプロレスの楽しさを引き継ぐ

服部
高木さん自身が新しいアイデアを生み出すために、日頃から意識していることはありますか?

高木
やっぱりテレビのバラエティ番組は意識しますね。最近だったら、ネット番組も参考にします。今なら魔裟斗さんや青木真也さんなどの有名な格闘家が推薦した若い選手がトーナメントで戦うAbemaTVの「格闘代理戦争」とか、面白いですもんね。そういうのを見ると、DDTでもできないかな、とつい考えてしまいますね。
それと、エゴサーチも結構やります。やはり自分の考えたイベントなんかが人々にどう思われているかは気になるので。もちろん、ひどいことを言われることもあるけど、そこはあまり気にしません。エゴサをやると、今、世間でどんなニーズがあるのか、また、どんな選手が人気なのか、リアルにわかるので必ずチェックしていますね。

服部
時代のトレンドやニーズを常に気にされているということですね。

高木
そうですね。そうしたなかから、DDTでやったら面白いんじゃないかというアイデアを常に探しています。とにかく、プロレスは一種のお祭りなので、DDTは非日常を追求したいと考えています。どんなにバカな発想でも、ツッコミどころとかあってもいい。逆にツッコミどころが多ければ多いほど勝ちだと思っています。

服部
ちなみに、DDTはプロレス業界の異端児と言われるわりには、他の団体の興行にも積極的に参加していますよね。新しいことをやっているけど、決して従来のプロレスを否定しているわけではありませんね。

高木
それは僕自身が、昔からのプロレスファンだからであって、深い戦略的な理由はないんです。僕はかつて大仁田厚さんに憧れていたので、大仁田さんのカムバック興行に協力したのも自然の流れでした。実際、大仁田さんのような一時代を築かれた方からは学ぶことが多いですし、そうした業界のレジェンドとご一緒することで、僕たちの認知度を高めることにもなったと思います。
とにかく、ただ単に新しいことだけをやっていればいいだけではなく、昔からのプロレスの楽しさ、素晴らしさは引き継いでいきたいと思っています。

 

(Vol.3に続く)

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