効果的なアプローチにすべく、こだわったクリエイティブ
─効果測定はどのように行っているのですか?
テレビCMもタクシー広告もオフラインなので計測が難しいのですが、弊社は主に3つの切り口で効果検証を行いました。
一つは、短期的な視点で売上にどうプラスに働いたのかを見ること。資料請求があった際、弊社のインサイドセールスの中でも初動対応を行うチームがお客様に電話で認知経路をヒアリングしてセールスフォースに記録し、認知経路と商談の結果をトラッキングできる仕組みを作りました。
ヒアリングベースなので完璧ではありませんが、生み出された商談数の算出や、リード数の推測ができます。あくまで推測値ではありますが、少なくともヒアリングできたなかでは「これだけのLTVを生み出している」という数を算出して、赤字か黒字かという判断をしたんです。
二つ目は、間接的な効果を見るためのアプローチをしました。CMって直接的な効果だけではなくて、相乗効果でデジタル広告やイベントにもプラスに働いている可能性が高いですよね。
そこで、それぞれにかけた予算にCM制作費やタクシー広告などの出稿費用を按分し、全体で得られた収益と全体にかけたマーケティング費用を比較して、会社の収益に対するインパクトを判断していました。
三つ目は、CMを打った前後で採用の応募人数や検索数にどれだけ違いがあったのかを、サブ指標として見ていました。また、カスタマーサクセスを測るための指標として、接続回数(お客様が『bellFace』を使った回数)にも着目しました。接続回数が増えたということは、それだけ“お客様のお客様”に受け入れられやすい環境ができているということですから。
─御社内に分析チームがあるのでしょうか?
現在(※2020年2月時点)の社員数が120名なのですが、その中でWebサイトや広告の改善に携わっている者が、クオーターに1回くらいのペースでユニットエコノミクスの分析を行ってきました。
─宣伝広告のクリエイティブ面で留意したことをお聞かせください。
一つ目のポイントはスタンスを明確にすることです。というのも、インパクトを重視しないと、すぐに忘れられてしまうので。弊社はとにかく「営業は訪問するのが当たり前」という商習慣を打破する必要があったので、訪問営業を全否定するわけではないけれど、あえて “It’s OLD営業”という切り口に振り切ったんです。
そうしないとメッセージがぼやけてしまいますからね。私の入社前に決定していた照英さん起用の背景は、訪問文化の象徴として「昭和の営業マン」っぽい人の候補が何名か挙がったなかで、一番ハマったからだと聞いています。
2つ目のポイントは「営業あるある」を大事にすること。現実と乖離すると受け入れてもらえなくなってしまうので、「あるある感」をとても大事にしています。
3つ目は、CMの制作費はケチらないこと。社長の中島が元々、『社長.tv』という企業PRサイトの動画制作に携わっていて、クリエイティブ次第でインパクトが変わることを熟知していたので、クリエイティブのクオリティにはとことんこだわる方針でした。
CMを打つにあたって、いかに枠をおさえるかといった媒体費よりもクリエイティブに重きを置く中島の意思決定の的確さには、私も感銘を受けました。
─外部からの反響はいかがでしたか?
「CM見たよ」というお声をいただくことも増えましたし、今までは「ベルフェイスって何の会社?」という反応だったのが、「あ、ヒラメ筋の会社ね」などのように返ってくるようになりました。
そのイメージで留まっていていいのかどうかは別として(笑)、認知獲得という意味では貢献することができたと思います。また、効果検証を行った結果、CM経由の問い合わせも増え、しっかり売上にも貢献することができたということも見えてきました。
“カスタマーサクセス”に貢献する
─営業に特化したWeb会議システム『bellFace』の強みとは何でしょうか?
移動時間がなくなる分、一人あたりが担当できるクライアント数が増えることや、事前準備がしやすくなるというメリットがあります。また、単にオンラインで商談ができるというだけではなく、商談内容を録画・分析できる機能なども搭載しているので、受注に至った商談と至らなかった商談を後から見比べて、営業人材のトレーニングなどに反映できるんです。
効率化できた時間を活用して、マネージャーが録画情報をフィードバックして部下の育成を図るなどといった効果も期待できます。
弊社ではお客様が『bellFace』を使うことで、それぞれの営業課題を解決できることを理想としています。『bellFace』の機能によって、受注率や商談単価の向上、人材育成などそれぞれの企業が抱える課題解決や、売上の底上げに貢献していくことが、目指すべき姿だと思っています。
─『bellFace』をお勧めするときに最も重視していることは?
資料やサイトで伝え切ることは難しく、それらを見るだけでイメージできるお客様は少数だと思うんですよ。なので「適切な人に、適切なタイミングで、適切な情報をどう届けていくか」という点にこだわっています。ここを円滑に行う仕組みを作らないと、目指す世界観の実現も、売上目標の達成もできないと考えています。
─具体的にはどのようなことをされたのですか?
最初に取り掛かったのは、セールスへのインタビューや商談同席、事例調査やヒアリングなどを通して弊社にとっての見込み客に対する理解を深めることです。その解像度を上げながらペルソナやカスタマージャーニーに落とし込み、施策全体をどう組み合わせて仕組みに落とし込んでいくかの設計に力を入れましたね。
チームの立ち上げ当初から、MarketoやFORCASを連携させて、できる限り顧客に合った情報を届けられる仕組み作りを進めているのですが、今なお模索している最中ですね。コンテンツを作ってABテストしてみたり、実際に送ったメールの結果を踏まえて次のメールの内容を考えたりといった、地道な作業を繰り返しています。
また、マーケティングはインサイドセールスやセールスとの連携が肝になると思うので、それぞれからのフィードバックも得ながら、適切なやり方を探っているところです。コントロールするべき変数が多いので大変ですが、全体を俯瞰して舵とりするのは非常に楽しいですね。
全社連携の精神で、新たな挑戦へ
─今なお、次々と課題をクリアしておられるのですね。
課題解決については、いくつかのフェーズに分かれますね。最初の課題はリードの“質”でした。チームの立ち上げ前後で、資料請求数が一気に倍くらいまで跳ね上がったことがありました。それらが相手の温度感など関係なくどんどん「商談」として設定されてしまい、営業部門が疲弊してしまったことがありました。
そこで、電話でヒアリングした際の反応などから本当にホットな商談だけを見極めて設定できるよう、初動対応を行うチームを会社として立ち上げました。まずはこの課題を解決して、最低限しっかりと軌道にのせる必要がありました。
次の課題になったのは、いかに量と質の担保をしていくかでした。そのためには、インサイドセールス、セールスからのフィードバックを集めて施策を改善していくことが重要でした。効果計測や仕組みづくりはもちろん、定例的に各チームと直にコミュニケーションを取る機会を設けて、気軽に「あれ良かったよ」みたいな話ができる関係づくり・雰囲気づくりにもチーム横断で注力しました。
これができないと先の成長はないだろうと思っていましたし、実際にマーケティングとインサイドセールス、セールス間で密なやり取りができるようになったからこそ、今の結果があると思っています。
─近内さんご自身がオープンマインドのスタンスであることを社内の各部門の人たちに伝えていくことも必要ですよね。
こちらからも「何でもいいから声かけてね」という姿勢で働きかけていましたし、インサイドセールスチームのマネージャーがメンバーに対して、現場の成功事例をマーケティングチームに共有するよう促してくれたこともありました。
弊社はそれぞれのチームにマネージャーが配置された分業体制の組織なのですが、全員がオープンに声をかけ合って、連携しながら全体の最適化を図っています。まだまだ改善の余地はありますが、今後も大切にしていきたいですね。
─これから挑戦したいことはありますか?
もっと売上につなげていくために最近取り組み始めたことのひとつは“セールス・ナーチャリング”です。マーケティングでは商談前の“リード・ナーチャリング”がフォーカスされがちですが、実際に商談が始まってからの情報が非常に重要だと思うんですよ。“お客様が本当は何に関心を持っているか”。
その見極めと、お客様の真意に合わせたアプローチこそが、売上につなげるためのキーポイントになると思うんです。商談が始まったら基本的にマーケティングはタッチしない会社が多いと思いますが、それで本当に売上の最大化ができるのかを社内に問題提起して、商談開始後も引き続きマーケティングチームがサポートできる仕組みを構築しようとしています。
─その内容をもう少し詳しく教えてください。
メールの開封状況やサイトの閲覧状況など、お客様の「行動履歴」の内容をセールスチームにフィードバックし、推測される課題やアプローチ方法の提案といった情報提供を、トライアルで始めてみています。なかなか骨が折れるのですが、勝ちパターンを探り、見つかったら次なる目標は“自動化”です。
営業メンバーに前述したような情報が自動で飛ぶような仕組みを作ろうとしているところです。どこまでうまくいくかは未知数ですが、マーケティングとしてより売上に貢献していくためのチャレンジ、ぜひ成功させたいです。また、セールスが自分でそのような分析ができるようにもしていければと思っています。
ベルフェイスの未来図
─「訪問文化を変える」という点において、実際の反響はどうだったのでしょうか?
第一手としてCMを打ったものの、実際には弊社の考え方をすぐに受け入れてくださるお客様もいれば、そうではないお客様もいるので、開拓していくうえで苦労があったのは事実です。弊社のスタンスに共感してくださるお客様から「(先方の)お客様が難色を示している」といったご相談を受けたら、弊社が経験した事例をもとに、アドバイスやノウハウの共有をさせていただきました。
オンライン商談を成功させるためのコンサルティングを、営業やカスタマーサクセスのメンバーが積極的に行い、その積み重ねで乗り越えてきました。
─御社のサービスが受け入れられやすい業界・業種はどこですか?
最も導入していただきやすく、その後も継続していただきやすいのは、IT系です。そのなかでもSaaS系のビジネスをやっている企業は特に相性が良いです。いかに収益率を改善するかという点を重要視しているので、自分事化して導入を検討していただけることが多いです。そのほかは、人材業界や広告代理店、マーケティング支援をやっている企業などです。割と広い業種で使っていただいていると思います。
─これからの展望についてお聞かせください。
「マーケティング=商い」だというお話をしましたが、リード獲得やナーチャリングの先にある「売上にどれだけ貢献できるか」という視点で、これからもマーケティングに取り組んでいくつもりです。
それを確立していくためにも、「営業を科学」することをもっとしていかなければなりません。売上につながる最適なリードの獲得、お客様へのタイムリーな情報提供、インサイドセールス、セールスチームのフォローができる仕組みづくりなど、まだまだやり切れていない部分を充実させていくことが第一の目標です。
また、サービス自体は5年目を迎えたばかりなので、データの蓄積がまだ不十分ではありますが、カスタマーサクセスチームと連携して「どんなお客様が使い続けてくださっているのか」を分析していけば、より適切なお客様の見極めが可能になるでしょう。
そうなったときに、それぞれがどうコミュニケーションを取っていけばいいのかも、もれなくセットで考えていけるようになると思います。1マーケターとして、マーケティングチームとして、この一連の体制を着実に作っていきたいと考えています。
─ありがとうございました。
<了>
ベルフェイス株式会社 マーケティング事業部 マーケティングマネージャー 近内 健晃(こんない たけあき)
ベルフェイス入社前の職務経歴は4社。1社目の総合人材会社では主に広告営業、2社目の広告代理店時代からマーケティングに関わり始め、教育系事業会社、外資系企業とキャリアを積んだ。
2018年9月、マーケティングの仕組みづくりや組織づくりにゼロから貢献したいという志を抱いて、ベルフェイスに入社。瞬く間に頭角をあらわし、2018年11月にオーナーシップ賞、2019年3月に下半期MVPを受賞した。