HOME マーケ サポーターとクラブチームが一緒に歩み、歴史を作り続ける アルビレックス新潟 専務取締役 是永大輔さん
2018.12.18

サポーターとクラブチームが一緒に歩み、歴史を作り続ける アルビレックス新潟 専務取締役 是永大輔さん

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サポーター目線でオープンな情報発信を

―サポーターと共にクラブを盛り上げていくために、来季は何か施策をお考えですか?

サッカーをはじめとするスポーツクラブは、どれだけアクティブ感を出せるか、露出できるかという要素が強いため、広く言うとクラブもひとつの“メディア”だと思っています。

空中戦と地上戦に分かれていて、空中戦というのは、自分たちのHPやSNSなども含め、新聞、ラジオ、テレビ、Webなど、いわゆるメディアを使うもの。地上戦というのは、地域の学校や病院への訪問といった、地に足をつけた活動、つまり“地域貢献”です。これら二つが合わさると、地域のみなさんの勇気の象徴になる。それがサッカークラブの存在意義だと思います。それを作り上げていくためには、空中戦と地上戦での活動をどれだけ活発に行っていくかというのが重要です。

 

―従来のメディア活動に加えて、プラスアルファの何かをされるのですか?

もちろんこれまでもやっていましたが、ともすると待ちの姿勢になっていたかもしれません。何もしなくてもメディアは取材に来てくれる、黙っていても露出がある、と。
でもそれではいけません。こちらから働きかけ、露出の回数を増やしていくこと。クラブの価値を出していかないと人は飽きてしまいますから、当然取材の回数は減り、掲載スペースは小さくなり、興味を失っていく人が出てきてしまう。取材に来ていただけるような活動をして、スペースを取りに行こう、というくらい一生懸命やっていく必要があります。

 

―SNS活用についてはどのように取り組まれていますか?

まだまだ弱いな、と今更ながらに思っています。ですが、少しずつですけどアクティブになってきており、双方向のコミュニケーションが生まれつつある実感を持っています。これまでは、あまり内部の情報を出さなかったので。

 

―具体的にどういうことでしょうか?

例えば、選手の移籍に関することは、時にはデリケートな内容もあるので100を開示することは難しい。しかし、それを50でも70でも言葉にできるところまで伝えることで、発信を信頼してもらえると感じています。

「○○が復帰した」「□□がシンガポールから戻ってきた」などということも、そのバックグラウンドを出すと喜んでもらえます。やはりストーリーを共有することが大事ですよね。
もちろん、サポーターそれぞれにとって、心の琴線に触れるストーリーは違うと思います。それでもサポーターの気持ちになって、何が知りたいのか、何に喜んでもらえるのかといったところを、クラブとして純粋な気持ちで素直に出した方がいいように思っています。それは選手自身のメディアやイベントへの露出だったり、生の声を届けるようなことも含めて。何か特別なこと、派手なことをするのではなく、サッカー選手として子どもに夢を与え、地域の方々と向き合って表現していくような活動に力を入れていきたいです。

 

―サポーターの意見やニーズについて、何か調査やヒアリングを行う機会はありますか?

試合日にはスタジアム広場で私自身が直接お話を聞いています。また、私個人のTwitterのアカウントには毎日色々なご意見が届いていますので、そこにアクションをすることもあります。
とはいえ、 「クラブとしてサポーターの意見を聞いています」という認識はありません。私自身もみんなで作ったアルビレックスの歴史の一員であり、いちサポーターです。だから同じ気持ちで「うん、うん」と共感しながら意見を交換しています。その上で、共有できることは共有したいと思います。現状は前述した「みんなで作ったアルビの歴史」だったり、「これがアルビのサッカー」というイメージから遠ざかっているので、そこに近づけるためには情報の共有というのが絶対に必要じゃないかと思っています。

 

―来期は予算削減の報道も出ていましたが、これも共有の一環でしょうか?

ええ、5億円の予算を削減しなければいけないという発表をしました。この苦しい状況も、一緒に共有していかなければなりませんから。こういった共有がなければ「なんであの選手と契約更新しないんだ」とか「いい選手を取らないんだ」という声があがります。しかし、「現状の予算はこうです、だから優先順位はこうなんです」と説明すれば、「そうだったのか」とご理解いただけます。「できないことがあるんだったらどうすればいいんだ?」「自分たちにできることは何だ?」と、みんな思ってくれて一緒に戦ってくれる。

ヨーロッパのサッカークラブでも、ずっと右肩上がりのところなんてないですから。今が苦しくても、100年後には「アルビにもそんなことあったね」という歴史の一部でしかない。しかし、もしもクラブが消滅してしまえば、その歴史さえ無くなってしまうのです。だから今は耐えるときで、それをみんなでどうにかしようと。長い長いストーリーの中に自分たちはいる。一人ひとりがチームの歴史の一部なんだということです。

 

サポーターとクラブが手を取り合い、クラブの歴史を作り上げる

一般企業だと、顧客に対してここまでオープンな姿勢を取ることは少ないです。

クラブはいち企業ですが、実質的にはもっと公共的な存在だと思います。
だからといって、「これはクラブの仕事だよね」「これはサポーターにお願いするね」という役割分担ではないんです。役割分担にすると、ネガティブなことが起こったときに「何をしているんだよ、しっかりしろよ」とお互いになってしまいます。でもそれはアルビレックス新潟の姿ではない。

最近思うんですが、クラブとサポーターは見つめ合っているのではなく、一緒の方向を見て歩いていくもの、要は結婚のようなものだなと。時には喧嘩もするし、負の状況もある。それでも、家族の歴史として長く歩んでいくため、一緒の方向を向いて手を取り合っていくのです。

 

―アルビレックス新潟が抱える事情は、他のクラブにも当てはまるのでしょうか?

それぞれの悩みは全然別だと思います。だから例えばFC 東京や川崎フロンターレがやっていることをそのまま真似してみようというのはナンセンス。逆も然り。もちろんベンチマークにしないといけませんが、環境は共通していない。

例えばビッグスワンで一番歓声が沸くシーンが、別のスタジアムでは盛り上がらなかったりしますし、場所が違うと求められるものも違う。アルビレックス新潟のサポーターは選手がとにかく頑張っていて、奪われたらすぐ奪い返しにいくようなプレーに大喝采が起きます。得点と同じくらい喜んでくれます。選手が頑張っている姿に自分を重ね合わせて、選手の良いプレーを見ることができたから気持ちいい、「これで明日からも頑張れるよ」と思える。「自分ごと」として想いを共有してくれます。
ですから、目指すサッカークラブと、サポーターが自分たちと同じ方向を向いてくれているのかは、しっかりアンテナを立てて感じていくことが必要です。

 

―最後に、来季に向けて一言お願いします。

予算が限られていることは、もう決定事項ですから仕方がありません。ですから、もっと本質的なところに力を入れてステップアップをすることです。オン・ザ・ピッチでは、アルビレックスらしいサッカーをして、1勝を積み重ね、順位を上げていくこと。オフ・ザ・ピッチでは、地域と、サポーターと、もっともっと一緒に歩けるようなクラブチームにしていくことです。

 

―来季も楽しみですね。ありがとうございました。

 

 (了)

 


株式会社アルビレックス新潟 専務取締役 是永大輔(これなが だいすけ)

日本大学芸術学部演劇学科卒。携帯電話向けサッカーサイトの編集長を経て、08年にアルビレックス新潟シンガポールのCEOに就任。16年にアルビレックス新潟の取締役、18年には専務取締役に就任(アルビレックス新潟シンガポール代表兼任)。

 

【これであなたもアルビ通!?】

2019シーズン、アルビの飛躍に“早川史哉”選手は欠かせない!

2016シーズン、大卒ルーキーとしてアルビレックス新潟に加入した早川史哉選手。新潟市出身で、アルビレックス新潟のアカデミー組織(小中高校年代の育成チーム)を経て、早川選手がトップチームに加わったニュースは、地元でも明るい話題として注目を集めました。

J1リーグ開幕前のトレーニングキャンプで頭角を現した早川選手は、ライバル争いを制し、ディフェンダーとして開幕スタメンを奪取。持ち味である激しさ、またクレバーなプレーを90分間継続させて、チームの勝利に大きく貢献し、自身にとってもプロのキャリアを最高な形でスタートさせました。

しかし、同年5月に急性白血病と診断。クラブを通じて発表されたニュースに、サッカー界には大きな衝撃が走りました。いわゆるアンダー世代の代表にも選出されていた早川選手の突然の病に、多くのサッカーファンが心配し、復帰を願うコメントがSNSを中心に発信されていました。

多くのJクラブがホームゲームで早川選手を支援する意志を発表するなか、アルビレックス新潟としても契約を一時凍結し、サポートの体制を整えました。早川選手本人も、「全力前進」という言葉を胸に、再びピッチに立つことを目標として治療を続けました。

 

2017年12月。早川選手は自宅での療養から、アルビレックス新潟クラブハウスでのトレーニングに切り替え、本格的に復帰への道のりをスタートさせます。屋内での筋力トレーニングやジョギングなどで少しずつパワーをつけ、その後は中学生年代、高校生年代のチームに合流するなど、プレーを再開。自身の体と向き合いながら日々を過ごしました。

そして、2018年8月からは、ほとんどのトレーニングをトップチームに身を置いて取り組むまでになり、練習試合で戦えるほどのフィジカルに戻ると、11月12日、ついに「契約凍結の解除」がクラブより発表となりました。

早川選手にとって、この嬉しい発表は「ピッチに立つこと」の実現に向けたステップのスタートでもあります。2019シーズン、アルビレックス新潟はJ1昇格を目指してJ2リーグを戦いますが、決して早川選手にとっても、アルビレックス新潟にとっても簡単な目標ではありません。結果を求めて戦うチームに、早川選手がどのように貢献するのか、注目が集まることでしょう。

 

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