『 SUNRISE CineAD Award 』設立と「ブランデッドムービー」との商品化
―『 SUNRISE CineAD Award 』の選考で、実際に応募作品をご覧になっていかがでしたか?
私も選考に加わり、応募作品を観たのですが、どの作品もブランデッドムービー」として人の心を動かすことができる力作揃いで、選ぶのが難しかったと言うのが本音です。
中でも、今回の受賞作品となったリクルートライフスタイルの「春」は、10代の女性が共感できる等身大の姿や会話が随所に見られ、押し付けがましさのない丁寧で繊細な演出も素晴らしく、10代の女性たちの物語として受け止めることのできるものでした。
その点で、当社が考える「ブランデッドムービー」として理想的な作品だったと思います。
―『 SUNRISE CineAD Award 』の設立だけではなく、「ブランデッドムービー」とシネアドのパッケージ販売も始められたんですよね。
そうなんです。当社では現在、「ブランデッドムービー」を専門に企画・プロデュースするFROGLOUDとタッグを組み、ムービーの企画・制作から、映画館での上映、映画祭への出品までをワンストップで提供可能なパッケージの販売を始めました。FROGLOUDは、「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」の代表である別所 哲也さんとチーフ・プロデューサーの諏訪 慶さんが立ち上げた会社で、これまで映画祭に参加した5万人を超えるクリエイターネットワークを中心に、国内外の映像クリエイターのネットワークを有するブランデッドムービー専門の企画・制作会社です。
今後は、共同で広告主・広告代理店への営業開拓を行い、FROGLOUDが企画・制作するブランデッドムービーを弊社経由で全国の映画館にシネアドとして上映致します。
―実際に広告主や広告代理店をまわられていて、感触はいかかですか?
「ブランデッドムービー」の営業はスタートしたばかりなので、一部では好反応を得ているものの、まだまだ「ブランデッドムービー」のことを御存じない企業も多く、これからといった感じです。「SSFF & ASIA 2018」で『SUNRISE CineAD Award』を新設したのも、より多くの人に「ブランデッドムービー」のことを知ってもらいたいという想いからなのです。
一方、広告主やクリエイターの人たちも、15秒や30秒では伝えきれないことが多いということを常日頃から実感されているようで、皆さんに興味を持ってもらえます。
ただし、通常に比べて制作費がかかる為、簡単には決済が下りないこともあります。そこは、当社の企業努力でパッケージ化しコストをおさえる等、広告主が出稿しやすいよう努力する必要があると思います。
―それでは「ブランデッドムービー」の普及のためにも『SUNRISE CineAD Award』は今後も継続されるのでしょうか?
もちろん、続けていきたいですね。継続することで、「ブランデッドムービー」が持つ可能性をもっと広げていきたいと思います。
こうした実績を積み重ねることで、広告主・広告代理店への営業もしやすくなると思います。『ブランデッドムービーってどんなものなの?』と聞かれた時、作品を見てもらうのが一番分かりやすいですから。
シネコンでの販促サービス「Sell Digital」
―「ブランデッドムービー」の取り組みの他に、メーカー様の商品購買を促す「Sell Digital」というサービスがありますが、概要を教えてください。
「Sell Digital」は、映画館で上映するCMのリーセンシー効果(直前に見た広告が消費者の購買活動に影響すること)を高めることを狙ったシネコンでの販促サービスのことです。
シネコンは、イオンモールやイトーヨーカドー、ららぽーと等の商業施設に併設されていることが多いので、映画を観に来られた消費者に効率的に宣伝を行えば、映画鑑賞後に買い物をして帰る人が増える傾向があり、データでも立証されております。
―具体的にはどんな仕組みなのでしょうか?
映画館来場者にキャンペーンの説明ハガキを配布し、館内では本編上映前にシネアドが上映されます。そして、映画鑑賞後はキャンペーン対象となっている商品の販売店に行き、購入した際のレシートをスマホで読み取り、送るだけでその場で簡単に応募することが可能です。後日、抽選の上で当選した人には、メールで映画鑑賞券などの特典が送られてくる仕組みです。
今までだと応募ハガキにレシートを貼って送るといったアナログ手法の「Sell」サービスでしたが、「Sell Digital」の仕組みですと、一連の流れをデジタルで実施できるので、キャンペーン時のコストや手間を削減することができます。
若い人はハガキに切手を貼って送るという習慣がない人が多いので、応募から当選までスマホで簡単に送れるようになれば商品を購入してキャンペーンに参加する人が今まで以上に増えると思います。
―今後の展開についてはいかがですか?
現時点では、特典を映画鑑賞券にすることが多いため、当選者に対してチケットコードの用意が可能なイオンシネマの映画館中心のプランとなっていますが、同じように商業施設が隣接する映画館であれば同様の展開ができると思います。また、ネットで座席指定できる映画前売券を活用するなど考えられますが、何をするにしてもスピード感が大切だと思います。
これからも、「ブランデッドムービー」や「Sell Digital」の他にも、アンケート調査等、映画館をマーケティングの場として効率よく活用するインシアタープロモーションにも力を入れ、さらに、広告主へのきめ細かなサービスを提供して参ります。
形は変わってもシネアドは不滅
―最後に、シネアドのこれからについてお聞かせください。
映画は最初、モノクロのサイレント映画として始まり、その後、トーキー映画やカラー映画へと変化し、シネマスコープなどのワイドスクリーンや3D映画等、時代とともに常に変化を続けてきました。しかし、どういう時代が来ても映画は不滅だと思います。そして、映画がある限りシネアドも形を変え、発展していくものと確信しています。
ただし、だからといって旧態依然としたままだと、時代に取り残されてしまいます。その意味で、これからは若い人にもっと活躍してもらい、従来にない発想のもと、新しいシネアドのあり方を探求してほしいと思います。
―新しいことにチャンレジすることが大切だということですね。
そうですね。そもそも、当社の成り立ち自体がとてもチャレンジングなのです。
というのも、当社を設立したのはシネアドとは何の関係もない日本海陸運輸株式会社という会社でした。1955年当時、石炭事業が次第に重油・電力に変わってきた為、会社の展望が難しくなり、新規事業による多角経営を目指して始めたのが、映画館広告だったのです。
―石炭がダメだから次は映画館広告で、という発想の転換がすごいですね!
まさに、当時にしては珍しい新進気鋭のベンチャー企業だったのです。その意味で当社は、もともと変化や挑戦を恐れない社風があると言えます。
次の70周年に向けて若い人が夢を持てる環境を作っていきたいと思います。
「ブランデッドムービー」のような新しい取り組みを形にしながら企業価値を上げ、業界発展にも寄与し、80年、100年と続けて参りたく思っております。
―本日はありがとうございました。
株式会社サンライズ社 代表取締役社長
田中 恒男
1979年にサンライズ社に入社。以降、管理部門を中心に経歴を重ね、2009年に8代目の代表取締役に就任。
株式会社サンライズ社
1955年以来、60年以上にわたり「映画をコミュニケーションメディアに」という経営理念のもと、映画館のスクリーンで上映されるシネアドを中心に、館内プロモーション等の映画館広告を専門として展開している媒体取扱企業。