〜時代の変化とともに進化する シネアド 。その新たな取り組み「 ブランデッドムービー 」とは?〜「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」に今年から参加! 株式会社サンライズ社 田中 恒男さん

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〜時代の変化とともに進化する シネアド 。その新たな取り組み「 ブランデッドムービー 」とは?〜「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」に今年から参加! 株式会社サンライズ社 田中 恒男さん

株式会社サンライズ社 田中 恒男氏


1955年の設立以来、60年以上にわたって映画館広告事業に従事してこられたサンライズ社。映画館で上映するスクリーン広告( シネアド )の形式も、紙芝居のようなスライド(静止画)からムービー(動画)へ、フィルムからデジタルへと、時代の移り変わりとともに大きく変化しています。そんな中、サンライズ社は「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」に今年から参加し、企業のブランドメッセージを生活者に向けて発信する「ブランデッドムービー」という新たな動画マーケティング手法で注目を集めています。今回はサンライズ社の代表である田中さんに、まだ始まったばかりの「ブランドデッドムービー」の取り組みを中心に、シネアドを中心とする映画館広告事業のこれからの方向性についてお話を伺いました。

時代とともに進化する シネアド

シネアドに馴染みのない読者のために、先ずはサンライズ社の中心事業となる「シネアド」について教えてください。

簡単に言えば、その名の通り映画館のスクリーンで上映される商品や企業CMのことです。

多くの映画館では本編の上映前に、必ずと言っていいほどシネアドが流れるので、誰もが一度は見たことがあるのではないでしょうか。

当社は、このシネアドの他にも、映画館内でのアンケートやサンプリング、イベントの企画などのインシアタープロモーションなども行っており、幅広い映画館広告事業を展開しています。

田中さんがサンライズ社に入社された経緯は?

大学を卒業して社会勉強のために別のことを2~3年した後、サンライズ社に入社しました。学生時代は映画が好きで、よく映画館に通っていたのですが、当時は本編上映前の広告で最初にサンライズ社が出てきていたので、漠然とですが記憶に残っていたのかもしれませんね。 入社後は、主に総務や経理などの管理系の仕事が中心で、先々代の社長の時代から事業や経営の企画を担当することが多かったです。

当時のシネアドはどんなものだったのですか?

私が入社した頃のシネアドは、今のように動画ではなく静止画を使ったスライド形式のものが多く、今思えば牧歌的な時代でしたね。その後まもなくして動画が中心となりましたが、それから現在に至るまでもフィルムからデジタルへと大きく移り変わってきました。


御社の歴史の中でも、デジタルへの移行は大きなトピックでしたか?

そうですね。2006年頃から始まり、2010年代を通じて急速に進んだデジタル上映の波は、私たちにとっても大きな出来事でした。

というのも、それまでのシネアドの多くはテレビCMの素材を使ったものが多く、そのため、都度ビデオテープから35mmフィルムへと変換する、業界用語で言うところの「キネコ」の作業が必要でした。しかも、上映館ごとにフィルムを用意しなければならなかったので、プリント費や搬送費などのコストも手間の負担も大きかったです。また、元がテレビCM用の映像素材なので、フィルムに変換して大きなスクリーンで上映すると、どうしても映像が粗くなってしまうのです。

しかし、フィルム時代のこうした問題のほとんどは、デジタルに移行することで解消できるので、私たちにとってはある意味で大歓迎だったわけです。

とはいえ、デジタルに移行するのは映画館にとってはコストがかかる話ですよね。

その通りです。ゆえに映画館自体はデジタルへの移行には慎重で、今から15年ほど前までは、上映設備のほとんどがフィルムで、デジタルでの上映ができない映画館がほとんどでした。そこで、当社ではシネアドの部分だけでもデジタルで上映できるように、興行会社にお願いして一部の映画館にデジタルの上映設備を置いてもらいました。

その費用はサンライズ社さんが負担したのですか?

そうです。興行会社にご負担いただくことはありませんでした。 実際にデジタルで上映してみると、思った通り映像はクリアで、上映も比較的簡単、「これは良い」となって、配給や興行会社の人たちへも、デジタルの良さが伝わったと思います。

まさにデジタル化の波を見越して先行投資されたわけですね。

当社としてデジタル化は避けられないだろうと思っていました。当時はまだ、映画館として大きな設備投資になるため消極的でしたが、上映も簡単になり、フィルム代やプリント代が抑えられるといったデジタル化によるメリットも大きいので、そのうち、全てデジタルになると読んでいました。事実、私たちが先行してシネアドのデジタル上映に踏み切った後、デジタル上映に移行する映画館もだんだんと増え、シネコンの隆盛とともにあっという間に広がりました。

シネアドも時代とともに大きく変化してきたのですね。

そうですね。映画自体が3DやIMAX、4Dなど、どんどん進化しています。時代に合わせ、シネアドも進化し続けなければいけないと思います。


「ブランデッドムービー」とは

「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア2018」(以下「SSFF & ASIA2018」)で賞を新設したと聞いていますが、具体的に教えてください。

「SSFF & ASIA」は、今年で20周年を迎える米国アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭で、俳優の別所哲也さんが代表を務めています。数多くの若いクリエイターが世界に羽ばたく映画祭として世界中で注目されています。

この映画祭には2016年より、企業・団体のサービス・活動、ブランディングにおける顧客とのコミュニケーションを目的として制作された作品を集めた「BRANDED SHORTS」という部門があるのですが、この度、当社の選考による『SUNRISE CineAD Award』という賞を設立し、公募作品の中から当社が考える最高の「ブランデッドムービー」作品を表彰することになりました。

「ブランデッドムービー」とはどのようなものでしょうか?

「ブランデッドムービー」とは、主に企業や商品のブランディングを目的に制作された映像コンテンツのことで、「生活者(観客)にとっての価値(エンターテインメント性や有益性)」と「企業やブランド側からのメッセージや理念」の浸透を両立できる動画コンテンツとして位置づけています。 分かりやすく言えば、企業やブランドのメッセージを伝えるために作られるショートムービーと思っていただければいいのではないでしょうか。

なるほど、CMというよりもメッセージ性が強いものなのですね。

私は、シネアドも映画本編と同じように観客の共感を呼んだり、感動を与えたりするものという意味で、同じ表現メディアであると思っているのです。ですから、単に商品や企業の紹介をするだけのCMではなく、ひとつの作品として見ることのできるコンテンツとして「ブランドデッドムービー」を考えています。 これからの広告は、企業や商品のブランディング戦略がますます重要になってくると思いますし、今まで以上にシネアドではその傾向が強まってくるはずです。観客が、映画館でメッセージ性の高い「ブランドデッドムービー」を観ることで、企業との距離が近くなり、より良いコミュニケーションがはかれると思っております。 その意味でも、創業以来「映画をコミュニケーションメディアに」という経営理念を掲げてきた当社に合致したコンセプトであると考えています。

具体的には通常のテレビCMとは何が異なるのでしょうか?

特に決まりはないのですが、一般的な違いは尺の長さで、通常のテレビCMは15~30秒のものが中心で、長くても60秒程度。「ブランデッドムービー」は最低でも1分、長いもので10分以上の作品もあります。通常のCMよりも長くなるので、ストーリー性やドラマ性が不可欠です。

単なる長尺CMと思われるのは避けたいので、我々は「ブランデッドムービー」というネーミングにこだわっています。


『 SUNRISE CineAD Award 』設立と「ブランデッドムービー」との商品化

『 SUNRISE CineAD Award 』の選考で、実際に応募作品をご覧になっていかがでしたか?

私も選考に加わり、応募作品を観たのですが、どの作品もブランデッドムービー」として人の心を動かすことができる力作揃いで、選ぶのが難しかったと言うのが本音です。 中でも、今回の受賞作品となったリクルートライフスタイルの「春」は、10代の女性が共感できる等身大の姿や会話が随所に見られ、押し付けがましさのない丁寧で繊細な演出も素晴らしく、10代の女性たちの物語として受け止めることのできるものでした。 その点で、当社が考える「ブランデッドムービー」として理想的な作品だったと思います。

『 SUNRISE CineAD Award 』の設立だけではなく、「ブランデッドムービー」とシネアドのパッケージ販売も始められたんですよね。

そうなんです。当社では現在、「ブランデッドムービー」を専門に企画・プロデュースするFROGLOUDとタッグを組み、ムービーの企画・制作から、映画館での上映、映画祭への出品までをワンストップで提供可能なパッケージの販売を始めました。FROGLOUDは、「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」の代表である別所 哲也さんとチーフ・プロデューサーの諏訪 慶さんが立ち上げた会社で、これまで映画祭に参加した5万人を超えるクリエイターネットワークを中心に、国内外の映像クリエイターのネットワークを有するブランデッドムービー専門の企画・制作会社です。

今後は、共同で広告主・広告代理店への営業開拓を行い、FROGLOUDが企画・制作するブランデッドムービーを弊社経由で全国の映画館にシネアドとして上映致します。

実際に広告主や広告代理店をまわられていて、感触はいかかですか?

「ブランデッドムービー」の営業はスタートしたばかりなので、一部では好反応を得ているものの、まだまだ「ブランデッドムービー」のことを御存じない企業も多く、これからといった感じです。「SSFF & ASIA 2018」で『SUNRISE CineAD Award』を新設したのも、より多くの人に「ブランデッドムービー」のことを知ってもらいたいという想いからなのです。

一方、広告主やクリエイターの人たちも、15秒や30秒では伝えきれないことが多いということを常日頃から実感されているようで、皆さんに興味を持ってもらえます。

ただし、通常に比べて制作費がかかる為、簡単には決済が下りないこともあります。そこは、当社の企業努力でパッケージ化しコストをおさえる等、広告主が出稿しやすいよう努力する必要があると思います。

それでは「ブランデッドムービー」の普及のためにも『SUNRISE CineAD Award』は今後も継続されるのでしょうか?

もちろん、続けていきたいですね。継続することで、「ブランデッドムービー」が持つ可能性をもっと広げていきたいと思います。 こうした実績を積み重ねることで、広告主・広告代理店への営業もしやすくなると思います。『ブランデッドムービーってどんなものなの?』と聞かれた時、作品を見てもらうのが一番分かりやすいですから。


シネコンでの販促サービス「Sell Digital」

ブランデッドムービー」の取り組みの他に、メーカー様の商品購買を促す「Sell Digital」というサービスがありますが、概要を教えてください。

「Sell Digital」は、映画館で上映するCMのリーセンシー効果(直前に見た広告が消費者の購買活動に影響すること)を高めることを狙ったシネコンでの販促サービスのことです。シネコンは、イオンモールやイトーヨーカドー、ららぽーと等の商業施設に併設されていることが多いので、映画を観に来られた消費者に効率的に宣伝を行えば、映画鑑賞後に買い物をして帰る人が増える傾向があり、データでも立証されております。

具体的にはどんな仕組みなのでしょうか?

映画館来場者にキャンペーンの説明ハガキを配布し、館内では本編上映前にシネアドが上映されます。そして、映画鑑賞後はキャンペーン対象となっている商品の販売店に行き、購入した際のレシートをスマホで読み取り、送るだけでその場で簡単に応募することが可能です。後日、抽選の上で当選した人には、メールで映画鑑賞券などの特典が送られてくる仕組みです。

今までだと応募ハガキにレシートを貼って送るといったアナログ手法の「Sell」サービスでしたが、Sell Digitalの仕組みですと、一連の流れをデジタルで実施できるので、キャンペーン時のコストや手間を削減することができます。

若い人はハガキに切手を貼って送るという習慣がない人が多いので、応募から当選までスマホで簡単に送れるようになれば商品を購入してキャンペーンに参加する人が今まで以上に増えると思います。

今後の展開についてはいかがですか?

現時点では、特典を映画鑑賞券にすることが多いため、当選者に対してチケットコードの用意が可能なイオンシネマの映画館中心のプランとなっていますが、同じように商業施設が隣接する映画館であれば同様の展開ができると思います。また、ネットで座席指定できる映画前売券を活用するなど考えられますが、何をするにしてもスピード感が大切だと思います。これからも、「ブランデッドムービー」や「Sell Digital」の他にも、アンケート調査等、映画館をマーケティングの場として効率よく活用するインシアタープロモーションにも力を入れ、さらに、広告主へのきめ細かなサービスを提供して参ります。


形は変わってもシネアドは不滅

最後に、シネアドのこれからについてお聞かせください。

映画は最初、モノクロのサイレント映画として始まり、その後、トーキー映画やカラー映画へと変化し、シネマスコープなどのワイドスクリーンや3D映画等、時代とともに常に変化を続けてきました。しかし、どういう時代が来ても映画は不滅だと思います。そして、映画がある限りシネアドも形を変え、発展していくものと確信しています。 ただし、だからといって旧態依然としたままだと、時代に取り残されてしまいます。その意味で、これからは若い人にもっと活躍してもらい、従来にない発想のもと、新しいシネアドのあり方を探求してほしいと思います。

新しいことにチャレンジすることが大切だということですね。

そうですね。そもそも、当社の成り立ち自体がとてもチャレンジングなのです。というのも、当社を設立したのはシネアドとは何の関係もない日本海陸運輸株式会社という会社でした。1955年当時、石炭事業が次第に重油・電力に変わってきた為、会社の展望が難しくなり、新規事業による多角経営を目指して始めたのが、映画館広告だったのです。

石炭がダメだから次は映画館広告で、という発想の転換がすごいですね!

まさに、当時にしては珍しい新進気鋭のベンチャー企業だったのです。その意味で当社は、もともと変化や挑戦を恐れない社風があると言えます。次の70周年に向けて若い人が夢を持てる環境を作っていきたいと思います。「ブランデッドムービー」のような新しい取り組みを形にしながら企業価値を上げ、業界発展にも寄与し、80年、100年と続けて参りたく思っております。

本日はありがとうございました。




株式会社サンライズ社 代表取締役社長
田中 恒男

1979年にサンライズ社に入社。以降、管理部門を中心に経歴を重ね、2009年に8代目の代表取締役に就任。

株式会社サンライズ社
1955年以来、60年以上にわたり「映画をコミュニケーションメディアに」という経営理念のもと、映画館のスクリーンで上映されるシネアドを中心に、館内プロモーション等の映画館広告を専門として展開している媒体取扱企業。

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